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13/9/3

ヘタレ貧乏、起業する 第4話:束縛契約書

Image by Olia Gozha

若さゆえの「無知」

知っている上で恐怖や不安を感じているなら幸せな方だ。

この世で一番危険なものは巨大地震でも津波でも、火災でもマフィアでもない。

「無知」、知らないことである。


ヘタレ貧乏、起業する 第4話:束縛契約書

勘違い野郎ども二人は、それからデュオ名(グループ名)を決めることになる。

しばらく悩んだ末決まらなかったので、仕方ないからお互いの好きなミュージシャンの曲から取ろう!ということになった。

色々とCDを見ている内、僕が大ファンであるミスチルの「Atomic Heart」というアルバムを見つけた。その中の一曲に「クラスメイト」というタイトルがある。僕たちはもともと小・中学の幼馴染だったので、そんななんとも解りやすい動機で「CLASSMATE」というグループ名に決定した。もうやっつけだ。

とりあえず決めてしまい、後から変更する予定だったが、最後まで結局変わることはなかったそうな。「プロのミュージシャンになる!」という初めての夢を持った二人はそれから毎週亀有の20時に集まり、路上ライブを続けた。しかし最初の人だかりが嘘だったかのように人が集まらない。

「これは・・場所が悪い!そうだ!場所を変えよう!もっと人が多くて、有名な・・・」

と実力の無さを場所のせいにした無知な僕らは千葉県の柏駅前に拠点を移すことにした。実際移動してみると柏駅前は人が多く、たくさんのストリートミュージシャンが5mおきくらいに陣取っていた。

「よし、コイツラの客はすべて俺たちのモノだ!奪ってやる!吸い尽くしてやるぅぅぅぐへへへ!!!」

と心の中で思ったのは言うまでもない。

そしてその勘違いをさらに加速させる出来事が起こる。何度か柏での路上ライブを続けていると、一人の沖縄県民みたいな濃い顔をしたお兄やんが僕らをじっと見ている・・・

いや、どちらかと言えばインドネシア人のような顔だ。まぁ、どっちでもいい。


少年結城「くに、くに。なにやらインドネシアが俺らを見てるぞ。殺されるのか?」

少年クニ「いや、違う・・・あれは"ファン"だ。俺らの"ファン"なのだ!その証拠にあのうっとりとした顔を見ろ。死ぬのはヤツの方さ。俺らの歌声でな。」


・・・僕は言葉が出なかった。くにの言葉に強く納得してしまったからだ。

そんなやり取りをしている間に、インドネシアが近づいてきた。


インドネシア「ねえねえキミたち、いつもここで歌ってるの?素晴らしい演奏だねぇ!」

CLASSMATE「ありがとうございま~す!はい、歌ってます。お兄さんはインドネシア人ですか?」

インドネシア「やっぱりそう見えるかい?でも残念!れっきとした日本人さ。純正だよ。僕はこういう者なんだけど・・・」


と言って名刺を手渡された。その名刺には「○○○○プロ」と書かれている。

「もしや・・・」僕たちは唾をゴクリと飲み込み、顔を見合わせた。


純正「キミたち、プロになれるよ。良かったらウチに来ない?」

やっぱり、やっぱりそうだ!俺たちは認められたんだ。アメリカンドリームの始まりだ!

若さゆえの無知とは恐ろしいものだ。僕たちは浮かれあがり、すんなりそれを承諾してしまう。その数日後、僕たちは○○○○プロの事務所に行き、契約書を書いた。

それは、僕の音楽人生を大きく狂わせる「束縛契約書」だった・・

つづく。

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