師匠と出会う
私はとにかく探していました。
そして、ワークショップと呼ばれた場所で、私の最初の師匠と出会いました。

私がそこで最初にやったのは、「サークルボール」という参加者同士でボールを投げ、受け取るということを繰り替えすシンプルなワークです。
私はたまたま、師匠の前に座っていたので、指名されて練習役をしたのでした。
師匠「「よし、じゃあ、そこの黒い服の男性、立ってくれる」」
わたし「「‥は、はい!」」
師匠「「名前は、えーと・・」」
わたし「「はかせで‥す、はかせと書きました」」
師匠「「そう、じゃあ、はかせ、ちょっと手伝ってくれる?」」
わたし「「・わかりました。」」
師匠「「このボールは皆さんの気持ちだと思って下さい。皆さんの大切な気持ちです。気持ちを相手に届けたいときはどうしますか?まさに気持ちを込めて届けますよね。届いて欲しいと思って伝えるでしょう?そういうボールです。このゲームはとても簡単です。まず相手の名前を呼びます。名前を呼ばれた人は返事をします。じゃあ、はかせ!!」」
わたし「「はい」」
師匠「「返事が聞こえたらボールを渡します。相手が落とさないように気をつけて下さい。じゃあ、はかせ!!」」
わたし「「はい!」」
師匠「「・・このように渡します。渡された人はまたボールを誰かに渡します。はかせ、私にボールを返して」」
わたし「「・・まつきっちゃん」」
師匠「「はい!!‥このようにです。落とさないように投げる人は気をつけてください。おもいのこもったボールです。例えば、返事をしないうちにボールを投げたり‥はかせ!!」」
わたし「「はぁ・!!」」
師匠「「‥こんな風に。ごめんね、はかせ。今度はちゃんとやろう。はかせ!!」」
わたし「「はい!」」
師匠「「・・いいですか。じぶんのおもいのこもったボール、みんなのおもいのこもったボールです。大切にしましょう。はかせ、ありがとう」」
わたし「「はい・・」」
師匠「「じゃあ、はじめましょう!!」」
この人のことを知らなくちゃ・・
ワークがはじまって終わるまで、ただ呆然としていた自分を思い出します。
何か大切なものを学んでいる気がする、でも楽しくて自由なこの心地は何だろう・・今でも忘れないですね。

師匠との出会いのワークショップが終わった後、私はこの人のことをもっと知りたいと思いました。いや、不思議と知らないといけないように思ったんです。
私は恥ずかしがりやの臆病者です。それでも、思い切って松木さんに話しかけたんです。「松木さんがやっているワークショップにまた参加してみたいんです」って。
そしたら師匠は言いました。
「それならこれからワークショップのミーティングするから、そこに参加してみたら?」
これは、ヤバイ・・
そのミーティングは、little wolf campという、子供たちが参加するキャンプワークショップのスタッフ会議のことでした。私は飛び入りでしたが、特別に参加できることになったのです。
その会議の会場に行くと、そこは薄暗い教室で、私の他にも10名くらいスタッフの方がいました。年齢は私と同じくらいの人が多そうでしたが、私は誰も知りません。彼らはとても親しそうに話し合っていました。
少し心細かったのを覚えています。

そしたら、薄暗い教室がいよいよ真っ暗になって、師匠が奥からやってきました。
師匠は低いうなり声を出したかと思うと、小さなマラカスのような楽器を鳴らし始めました。そして、祭壇のようなろうそくに火をつけて、後でセージと知る葉っぱのようなものを燃やし始めたのです。
私は、これはアブない、と思いました。ワークショップに参加するのはまだ慣れてはいませんでしたが、危ない宗教の勧誘のようなワークショップがある事は知っていました。
思わず周囲を見渡しました。真っ暗でどこが出口だったのかもうわかりません。いくら迷っているこんな自分だったとしても、こんなところに来てしまうとは。この先何かあればすぐにここから逃げ出さなくては。
そんなことを考えていました。
魂について語ることを恐れるな
その時師匠がこう言いました。
「Don`t be afraid to talk about a spilit.」
魂について語ることを恐れてはいけない
衝撃のある言葉でした。まるで雷に打たれたように、呆然としていました。
そのころ大学2年生の私は、自分がこれからどのように生きていけばいいのか悩んでいました。いろんなサークルをはしごしたり、大学の外に出て初めての人に会ったり、その頃の自分にはストレスフルなことを続けていました。でも、なかなか自分がこれと思うものには出会えませんでした。
そんな私を、師匠の声は、やさしく諭しているように思いました。
師匠はこの言葉を2回繰り返しました。

そうか、魂、自分の一番大切なところにあるものを、誰かに話すことを恐れてはいけないんだ、この迷っている自分、こんな所にいて不安でつらい気持ちも、外に出していかなきゃ。師匠が私にそう言ってくれているように聞こえました。
そうしたら、知らずに涙が出てきました。
そのあとで、師匠が続けたのは、ワタリガラスの神話でした。創世の話に私には聴こえました。何かが始まっていくような、希望のにおいのようなものがしました。
この人についていこう、そういう時間が始まった時でした。

