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13/8/10

株式投資残酷日記 〜ライブドアショック、世界金融危機をまともに食らった話〜

Image by Olia Gozha

プロローグ

僕が19歳のとき。

浪人中のときのことなんだけど、その歳になるまで人生についてとか、将来何しようとか本当にまったく考えてなくて、それまで鼻垂らして生きてたんですね。

周りを見たら、みんなどうにかなってるし、人生なんとかなるっしょとか思いながら生きてたんだけど、てか実際になんとかなるんだけど、そのときはこれじゃいかんと思って、初めてちゃんと人生とか、この先の身の振り方とかを考えたんですね。

で、特にやりたいこともなかったので、とりあえず経済的に成功するためにはどうしたらいいのかな?なんて考えて、実際にお金持ちになった人はどうやって成功したんだろうとか思って、とりあえずフォーブスの世界長者ランキングとか見てみると、あることに気づいたんです。

ビル・ゲイツとかウォーレン・バフェットとかの億万長者って、どうやってお金持ちになったかというと、要は株なんですよ。

自分で立ち上げた会社の株をIPO(株式公開)したり、売却したりして成功してるんですね。

それから、株式会社や株式市場のしくみって、資本主義の根幹を成すシステムで、資本主義経済を学ぶうえで株式投資をすることによって勉強しようと思ったんですね。

ごめんなさい。嘘つきました。本当はジョージ・ソロスみたいにイングランド銀行にポンドを売り浴びせて何千億円も儲けたり、ジョン・ポールソンみたいにサブプライム・ショックのときにCDSを空売りして何兆円も大儲けしたいなとか考えてました。

ライブドアショック

そんな感じで、敬虔なキリスト教徒が聖書を読むみたいな、とてもピュアな動機で証券口座を開設し、アルバイトで貯めたはした金を、人間の欲望と恐怖の渦巻く株式市場にぶち込んだんですね。

当時ぼくは人類史上最も成功した投資家ウォーレン・バフェット氏に憧れていて、ファンダメンタル分析に基づいた長期のバリュー投資の勉強をしておりました。

バリュー投資というのは、その会社の将来のキャッシュ・フローやROE(自己資本利益率)などから株式価値を割り出し、その理論価格よりも大幅に安ければ買うという投資法です。

このときに色々な会社の有価証券報告書を読み漁り、マッキンゼーの企業価値評価という本を読んで、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法やマルチプル法や、ディスカウント・レートを割り出すためのリスク計算をし、一日中Excelのスプレッドシートをいじくり回してバリュエーションをしていました。

そして、その当時ホリエモンこと堀江貴文さんが経営していたライブドアという新興IT企業が世間を賑わせていました。

もちろんライブドアもデューデリ(資産査定)させて頂きました。       残念ながらPERが高すぎて、評価はセル(売り推奨)だったんだけど、ぼくはその時からホリエモンのファンだったので、応援のつもりでお小遣い程度の金額を投資させて頂きました。

結果はご存知の通り、検察が強制捜査に入り、翌日から連日のストップ安でした。ただ、投資額が少なかったこともあり、大きな痛手はなかったんだけど、株式投資の勉強という意味では大成功でした。

特にフジテレビとのニッポン放送株の買収合戦は非常に勉強になりました。

TOB(株式公開買い付け)やLBO(レバレッジド・バイアウト)、MSCB(転換社債型新株予約権付社債)やプロクシーファイト(委任状争奪戦)などのM&Aで出てくる専門用語が理解できるようになったからです。

世界金融危機

その後も株式投資や金融の勉強を続け、ファンダメンタル分析からさらにアカデミックな現代ポートフォリオ理論の勉強をしたりしていました。

これはノーベル経済学賞を受賞した理論で、ぼくは現代ポートフォリオ理論に基づいた経済学的に最も正しいとされる投資法にシフトしていました。

現代ポートフォリオ理論とは、卵をひとつのカゴに入れるなという格言を理論化したもので、リスクを最小化しリターンを最大にするには、インデックスファンドをバイ・アンド・ホールドするだけという非常にシンプルな投資法です。

この理論に忠実に基づいた投資をするために、外国株を取引するための口座を開設し、世界中の株式指数に連動した米ドル建てのETF(上場投資信託)を購入したりしていました。

他にも、Google株を買ったり、世界銀行の発行する南アフリカランド建ての高利回り債券を買ったりと色々とやっていました。

毎日PCのディスプレイの中で繰り広げられるただの数字の上げ下げに一喜一憂しながらも、配当金や含み益が出ていて、運用はそれなりに順調でした。

そんな平和な日々に突如としてリーマン・ブラザーズ破綻のニュースが飛び込んできました。リーマン・ブラザーズはアメリカの投資銀行で、64兆円という人類史上最大の破綻額で倒産しました。この破綻をきっかけに世界金融危機が引き起こされたわけです。

ぼくは当時、ほぼすべての資金を世界株式市場に投じていて、世界の株式市場が同時にメルトダウンする様をただ呆然と眺めていました。

毎日毎日、世界の市場の株価は下がり続け、同時に円安も相まって、資金はどんどん溶けていきました。

最終的に資産は半分以下にまでなりました。

幸いにも、資産のほぼすべてを投じていたとはいえ、学生のアルバイトで貯めたはした金です。また、ぼくはレバレッジを掛けていなかった(信用取引はしていなかった)ため、借金を背負う可能性はなかったので、比較的平静を保っていられましたが、もっと投資額が大きければ、世界金融危機はまぎれもなく世界の終りだと思ったことでしょう。

それでも株式投資をすることによって、チャート分析やファンダメンタル分析、ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法などの企業価値評価の仕方や、現代ポートフォリオ理論などの株式投資や金融の勉強にはなりました。

非常に高い授業料を払わされましたけど。笑


今は株式投資はしていませんが、勉強したことや体験したことを通じて、試してみたい仮説もできました。

いつかそれを試してみて、結果はまたここで発表してみたいと思います。

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