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人生の醍醐味 282 和紙

Image by Olia Gozha

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「和紙を何千億万枚も重ねた。」と、仮にしてみよう。 そんな壁紙があったとしたら、そして、その壁紙が、「生と死の間を仕切っていた。」と、仮にしてみよう。  人生はある意味で、とてつもなく面白い。


現代では、生まれたての赤ちゃんと死の間には、それこそ和紙を何千億万枚も重ねた分厚い壁紙で分離されているようなものだ。  


その丈夫な壁紙に守られている分、 赤ちゃんと死は普通ほとんどの場合、遥か彼方の遠距離に離れている。



でも、高齢化し80代を過ぎると、薄皮を剥ぐように、その壁はとても薄くなる。 


長い人生道中で知らぬ間に、一枚一枚和紙を剥がし続けてきたようなものだ。 最後には、生と死は紙一重になってしまうのだ。


ホスピスの施設に入っている、ある患者さんは87歳。 認知症もまだとても軽度で、長々と自分の生い立ちや経験談等が話せる。 


ただ、両足の膝から10センチ下から爪先まで、薄黒くなっていて、その患者さんはもう全然歩けない。


彼女の話し方は、確かに、繰り返しの部分は多いが、それでも普通らしい会話を続けられる。


バランティアで、参加した私は80歳。  7年後に、その患者さんほどの認知度を保持できるかどうかも分からない。 


その患者さんは「歳の割に頭はしっかりしている方だ。」と言う、印象を受けた。


一方、 週一で参加している花札ゲームでは、 毎回ゲームで組む人が違うので、短期間にせよ、ホノルルに住んでいる、結構多数の日系アメリカ人にお会いできる。 60代の人も90代の人も参加している。


今日は偶然、私の前に90代の日系アメリカ人女性が座った。 あやこさん(仮名)と言う日本的な名前であるが、 英語は完璧であるので、米国生まれの方である。


少なくとも、90代でも、ホスピス施設ではなく、健康な他の高齢者と一緒に、カードゲームを楽しんでいる。 もちろん、一人でトイレにも行けるので、足腰もしっかりしている。


彼女の場合も、あの壁紙は長年の内に薄くなり、和紙が数10枚残っているだけのようだ。


和紙が一枚でも残っている間は、わたしも仲間とカードゲームに興じていられるような健康度を保ちたいものだ。






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