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誰でも、赤ちゃんとして生まれる。 社会の掟も知らず、誰でも遠慮なく大声で泣きながら、この地上の住民になる。
まるでスポンジのように、 その赤ちゃんは人間界のしきたりを吸収して、見事に人間界の一員になり切る。
人により地上生活の長さは違うが、 80歳、90歳と年を重ねると、死の接近を否応なく強く自覚する。
長い人生を、積極的に有意義に過ごせたと確信できれば、誰にでも訪れる死を、丸ごと受け入れやすい心境に達する事も可能だ。
何も知らなかった赤ちゃん時代を経て、夢中で家族に守られて生きているうちに、 薄々と人間界の実情が少し飲み込めるようになる。
小、中、高と学年が進み、 家族関係から、学友との関係、先生方の存在も自覚して、近所の人々、同郷の人々、自国の人々への関心と視野が自然に広がる。
自国の歴史、世界中の歴史にも興味を持ち、世界地図を学び、外国旅行を実現する人々も多い。
21世紀は、今まで以上に技術革新が加速化しているので、過去の常識が覆されそうな勢いだ。
人間はどのような状況であっても、大変化に自分を合わせてゆく能力を兼ね添えている。
高齢者は生命の順番に従い、この地上から徐々に消え去り、 無垢な赤ちゃんがどんどん生まれ、技術革新の変化に、自分の人生を自然とあわせてゆき、 歴史を学び、先人達の文化形態と現代の違いも学んでゆく。
一人の人間は、そのような雄大な人類の濁流のほんの一部だけ経験できるよう、どうも設計されているようだ。 創造力が優れ、知的能力が高い人々が、時代に合う仕事をこれからもどんどん作り出して行くだろう。
ふと見上げると、三日月が静かに見守っていた。
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