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人生の醍醐味 220 女性作家

Image by Olia Gozha

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米国で通訳業務に従事し始めて、数年経った頃、日本の女性作家と、米国の各地を1ヶ月訪れる仕事が入った。  主に米国の作家達と対談するのが目的だ。  


日米の作家達のネットワーク作りの一環だ。 ワシントンD.C.、ニューヨーク市、ボストン等を巡り、 ユタ州のブライス国立公園を通り、車で次の予定地まで行く行程であった。


29歳頃から、 アメリカで車を運転していたので、運転には慣れていたが、それはあくまで、普通の道や高速道路の運転だ。


国務省の通訳業務の場合、 多くの場合、アメリカ各地に、大勢のバランティアー市民がいて、車で移動の場合、 A地点からB地点まで、そのようなバランティアーであるアメリカの地元に住む市民が、国賓のため、運転してくださる場合が多い。 


勿論、 長距離バスを利用する時も、電車に乗る場合もある。  国際交流庁の職員が 日本のお客様の要望をも取り入れ、 訪問予定地を選定、会談相手を 選別するのが、 その職員の仕事で、日本のお客様が到着した翌日、三者会談を開き予定を組んでゆく。


ブライス国立公園を通らないと、次の作家との会談に支障が出るとの事。  生憎その日、その近くにバランティアーが見つからず、 私が運転する事になった。 事情を知った私は運転を引き受けた。  


ユタ州まで航空機で行き、ある会談も無事終わり、車を借りる手続きも済ませた。  ブライス国立公園への道はわかりやすかった。  


国立公園の入り口で入場料を払い、国立公園内の地図を受け取り、 目的地への行き方を公園の係員に確認して出発した。


驚きました。公園内の自動車道がいろは坂のように、曲がりくねっていたのです。  元々、 運転が趣味でもない私、アメリカでは車で移動しないと、日常生活に支障が出るので、やむおえず、運転している私は、曲がりくねった坂道の多い細道を、崖から落ちないように細心の注意を払いながらの運転、神経がすり減るような経験だった。  


しかも、同乗している女流作家様は、赤土の溢れた大自然のど真ん中を、車が走り続けるので、 興奮気味なのか、 お喋りが絶えない。


大事な政府御招待のお客様、御機嫌を損ねないよう気を使う必要もあったが、 対向車にぶつかりそうになる程難しい坂道、しかも片側は断崖絶壁、ハンドルを切り損なえば、地獄へ真っ逆さま。  


しかも、全長3時間に及ぶ車の長旅だった。  今も生きていると言う事は、なんとか事故に遭わずに、ブライス国立公園内を車で走り抜けた。 生きた心地がしないほどだった。  


無言で、全力集中で運転しても難しい道程、お喋りの相手は死にそうに辛かったが、笑顔を絶やさず何とか切り抜けた。


その後、コロラド州に入り週末とぶつかり、 偶然アスペン音楽祭開催中だったので、 アスペンにも立ちよる予定も組まれていた。 2泊宿泊。 


週末は普通会談予定は入らない。  アスペンの場合も、会談はなく、少しのんびりできそうだった。  女性作家様は、三週間近い米国の旅も終わり、残すところ後一週間。 


流石作家、自由時間ができると、原稿に向かい始めた。  「ミルクとパンを買って来て。 何か果物が手に入ったらそれもね。」と彼女。 私は小間使いに変身、要望の物を買い出しに出かけた。 「コヒー、お願い」「はい」と私。


「青ペンと赤ペン見つけてきて。」「はい 承知しました」と、売店に走った。  創作意欲が溢れ始めた作家のために、ほんの少しでもお役に立てる事が嬉しかった。


夜は、作家様ものんびりムード。 アスペン音楽祭は、世界的にも有名な音楽祭で、早めに夕食を二人で済ませ、音楽会場に向かった。


夏に開かれるアスペン音楽祭は、 以前、あの有名な日本生まれで 米国在住のバイオリン奏者の「みどり」も参加した事がある音楽祭なのだ。 


演奏者は音大の学生が多いようだ。 その夜はたっぷり素晴らしい音楽を楽しんだ。 日本のお客様も満足そうであった。


 



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