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ホノルルで、焦りの無い人生を楽しんでいる。 若い頃は、思い返してみれば、しばしば色々な事で焦っていた。
今は生活のために、あくせく働く必要も無くなった分、当然、焦り狂う状況も少なくなった。
でも、高齢者の特権である十二分にある時間は、心を引き締めないと、雑念で心の中が乱れ、収入のためでは無いが、焦ってしまう可能性がある。
8世紀に聖武天皇が、仏教を日本に取り入れて以来、長い年月が過ぎた。 仏教は1300年の時を経て、日本文化に深く入り込み、 日本文化の一部になっている。
私のように、日本を長く離れて、 西洋文化圏で生活していても、 ホノルルで護摩を焚く住職の姿に、神聖さを感じてしまう。
何百世代前の祖先から、世代ごとに引き継がれてきた仏教文化の伝統に、 心が無意識に惹きつけられるのだ。
多分、今では日本人の遺伝子の中に、しっかり組み込まれているのかもしれない。
仏教は瞑想を重んじる。 現代の西洋社会では、マインドフルネスという概念を用いて、 仏教的神髄を、 医療、教育などの分野で生かそうと試みられている。
何らかの理由で、転ぶだけで、高齢者の場合は大事に至る場合もある。
そのような観点からも、 怒らず、焦らず、 常に自分の心の中を、「平穏に保つ努力が大切だ。」と、強く感じるようになった。
瞑想法も色々あるが、短い呪文を何度も心の中で唱える方法もある。
私の今の呪文は「焦るな, 怒るな、落ち着けよ。」だ。
西洋は脳科学の進歩により、心の安定を保つ事が、病気をより早く回復させる可能性もある。」と言う観点からの、研究も進んでいる。
例えばジョン カバットージン(Jon Kabat-Zinn)
博士は、マサチューセッツ州立大学の名誉教授で、マインドフルネス センターを創設した。
そこでは、医学、医療、はたまた、社会全体が、より、ストレスを無くす事の大切さを教えている。
ストレス軽減のため、マインドフルネスという一種の瞑想法を、広めようとしているのだ。
生まれつき備わっている、各自に内在する能力を、最大限に発揮するためにも、心の安定が大変重要である。
やっと東洋と西洋が、一歩歩み寄る可能性が、生まれたのかもしれない。