top of page

人生の醍醐味  148

Image by Olia Gozha

148



7年程過ぎ、 インド系アメリカ人経営の小さな施設に住んでいた、夫の病状が進み、ホスピス看護に変わった。  と言っても、同じ施設内で、ホスピス看護が行われた。  


医師がその病人が、6か月以内に死亡する可能性大であると診断すると、ホスピス医療に変わる。  基本的に、キリスト教国であるアメリカでは、 死ぬ前に、懺悔の機会が何度か与えられる。  


夫の場合は、もう話もできない状態だったので、懺悔をきいてくださる牧師さんが、毎週夫のベッドの側で、静かに賛美歌を何曲か歌い、祈ってくださった。 


このサービスは、連邦政府の高齢者医療保険であるメディケアが支払う。 


また、専門のマッサージ師が、毎週約1時間半ほどのマッサージをしてくださった。これも メディケア側の出費。 人生最後は、ちょっとサービスが良くなるのだ。  


人の命は必ずしも、予定通りにはいかない。 一年経っても、病状は変わらなかった。 ホスピスを外されると思ったが、 最後だけは大目に見るのか、結果的に、一年半ほどホスピスの世話になった。


認知症病人の場合は、少しづつ、本人の心が消えてゆくので、はっきりとお別れをする機会がない。 


夫と私は初婚同士、46年以上、山あり谷ありの人生ではあったが、最後まで夫婦であった。


4年間連続して行なっていた、冬季ホノルル実地調査は、5年目は夫のホスピスへの移行で、中止になり、夫の住む施設に通い続けた。



夫の死後しばらくは、自宅を処分、遠方への引越し、新生活に溶け込む努力に、全身全霊を注ぎ込んだ。  



COVID-19 で、2020年と、2021年の数ヶ月は、基本的に全国民が、孤独な生活を余儀なくされたが、ある意味で、過去をゆっくり振り返る時間ができた。 


そうです。  夫は長年、アメリカ生活で、私の盾になってくれていたのです。 背の高い大学卒の白人が夫であるので、社会のアジア人に対する大小の差別も、あまり心を苦しめないですんだのです。


米国で、仕事をするよう勧めてくれた夫殿。大学2年分の授業料も(1970年代、当時は、安かったとは言え)、気安く出してくれた。  


生物学で、つまづきそうになった私の、家庭教師に率先してなり、 優しく教えてくれたお陰で、 まあまあの成績が取れた。 


日本で結婚後、 妊娠して5か月目、急に庭付き住宅を欲しがる私の希望実現のため、我々一家はカリフォルニアに引越した。  


子供の日本語並びに、日本文化習得のために、6年間住んだカリフォルニア州を離れ、日本行きを希望すると、あっさり賛成してくれた夫殿。


とても、協力的な夫に恵まれたことは、本当に幸運だった。 彼の後押しで、通訳者にもなれ、収入を得ることができた。  


毎日、無料で、ネイティブ スピーカーと英会話練習をしていたのだ。  安上がり! 私も専門職を持った事が、後ほど、我が家の危機を救ったのだ。


太平洋をほとんど毎日見ながら、 我が人生を振り返り、 幸せな人生であったと言える私は幸せ者だ。

←前の物語
つづきの物語→

PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

フリークアウトのミッション「人に人らしい仕事を」

情報革命の「仕事の収奪」という側面が、ここ最近、大きく取り上げられています。実際、テクノロジーによる「仕事」の自動化は、工場だけでなく、一般...

大嫌いで顔も見たくなかった父にどうしても今伝えたいこと。

今日は父の日です。この、STORYS.JPさんの場をお借りして、私から父にプレゼントをしたいと思います。その前に、少し私たち家族をご紹介させ...

受験に失敗した引きこもりが、ケンブリッジ大学合格に至った話 パート1

僕は、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ、政治社会科学部(Social and Political Sciences) 出身です。18歳で...

あいりん地区で元ヤクザ幹部に教わった、「○○がない仕事だけはしたらあかん」という話。

「どんな仕事を選んでもええ。ただ、○○がない仕事だけはしたらあかんで!」こんにちは!個人でWEBサイトをつくりながら世界を旅している、阪口と...

あのとき、伝えられなかったけど。

受託Web制作会社でWebディレクターとして毎日働いている僕ですが、ほんの一瞬、数年前に1~2年ほど、学校の先生をやっていたことがある。自分...

ピクシブでの開発 - 金髪の神エンジニア、kamipoさんに開発の全てを教わった話

爆速で成長していた、ベンチャー企業ピクシブ面接の時の話はこちら=>ピクシブに入るときの話そんな訳で、ピクシブでアルバイトとして働くこと...

bottom of page