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ホノルルは米国本土の東海岸に比べて、地理的にも日本に近く、長い歴史的関係が濃厚である分、街を歩いていても、至る所に日本文化の断片を垣間見る事ができる。
あるグループの活動が終了して、近くの喫茶店に移動、お喋りを楽しんだ。
後期高齢者に仲間入りして見ると、日本からホノルルの気候に引き寄せられた人々も多い。 私もその一人だ
また、子供さんが米国人と結婚して、ホノルルに住んでいるので、孫の世話も兼ねて、ホノルルに移住した日本生まれの退職者も多い。
昭和10年から昭和30年前後に、生まれた方々の集団であるから、 その時代の日本の価値観が身に染みている人々が多いのは当然だ。
ふっと見ると、男性は男性のグループで固まり、コーヒーを飲みながら、何やら談笑中だ。 女性は女性同士が固まって、御喋りを楽しんでいた。
昔々、私は宮城県立第三女子高等学校に通っていた。 宮城県では、当時、 県立高校でありながら男女別学であった。
まるでその余韻が、半世紀以上過ぎた今も、しかも、職業などでの性差別は、法律違反である米国に住んでいるにもかかわらず、昔の伝統をしっかり維持している。
日本生まれで、たまたまホノルルに長年住んでいる女性の中には、 茶道、華道等を、師範になるまで極めた人もいる。
日本舞踊の稽古に長年通い、 高い衣装代を 親達が出し、毎年発表会で舞台で踊った人もいる。
バレーを長年学んだ人もいる。
戦前、 戦中、敗戦後、 嫁入り前の短い稽古ではなく、長年、高価につく習い事を続けられたという事は、良家のお嬢様方だったに違いない。
庶民の一人であり、しかも田んぼのど真ん中にある、農家風茅葺の家で育ったわたしには、長期間続けるような習い事は夢のまた夢であった。
裸足で、畦道を走り回り、 近くの小川でたまにどじょうを掴んだり、蛙を追いかけて遊んでいた。
幸運にも裕福な家に生まれれば、習い事をいく通りも長年習っても、誰に迷惑をかけるわけではない。
でも、 現実に平成、令和に生まれ成長している多数の庶民の女子は、そのような良家のお嬢様が高齢化した姿から、今後の生き方を学ぶのは至難の業かも知れない。
少数ではあるが、21世紀の親達の中には裕福で、金に糸目をつけず習い事をさせている人もいる。勝ち組と言われる1パーセントの上層部の子弟にのみ許された特権だ。
でも、 現実には99パーセントの人々は、 インフレに追い討ちをかけられ、 しかも正規の職業に就くことも以前よりも困難になっている今、 自分の老後の蓄えさえ厳しいのが現状だ。
21世紀は、日本を含め、 世界中で、 男子であれ、女子であれ、一人一人が経済的に自立する事が、求められている社会の到来だ。
「女性だから」と、社会に甘えていると、人生の後半でしっぺ返しを受ける可能性が増大しているのが現状だ。