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「一体全体、人間の本性とはなんぞや」について書かれた書物を、木陰で数日かけて読んだ。
書名は「人間本質 の法則」(”The Laws of Human Nature”)で、作家はロバート グリーン氏だ。 (Robert Green)
この586ページに及ぶ分厚い本も、ニューヨークタイムズ紙のベストセラーである。
人には、冷静な理性が備わっているが、また同時に、感情に支配されやすい動物でもある。
不運や他者からの罵倒などに遭遇すると、 人は得てして、原因を、外部に押し付ける傾向が強い。
でも、人間の感情は、もともと、理不尽なものである事実を、忘却している場合が大半だ。
人は、本来、非合理で、感情的である事は、人間の脳の構造から解明できる。
爬虫類脳、哺乳類脳、人間脳と、脳は進化したが、21世紀の我々の頭の中には、渾然と、この三つの脳が共存していることを、意識することが大切なようだ。
人間は考える葦で、他の動物より優れていると錯覚しているが、 現実には、我々は基本的に動物にすぎない。
自己保存の本能が、強く我々を、支配している事実を忘れがちだ。
人は誰でも、感情に支配されることもある。 感情は一種の化学反応であり、状況によって、感情に走るのは、ごく自然な事だ。
感情を支配しているのは古い脳である。 旧古来のものであるだけに、そのシグナルは強力である。
人は、誰でも「他者の注目を集めたい。」という、感情を隠し持っている。
でも、その事実を、冷静な理性で、とことん理解している人は、ほとんどいない。
人間にもともと備わっている、隠れた感情の存在に、常に気づいておくことが、大切なのだ。
また、人間には、幸い、理性の脳もある。 悲しみや怒り等の感情が生まれた、本当の原因はなんであったのかを、冷静な頭で考えうる能力も、兼ね添えている。
どの動物も、恐れをいだけば、即行動を起こし、危険から自分を守ろうとする。
太古の昔から、21世紀の今現在まで、基本的に人間の根本的本質は、変わっていないことを、自覚することが重要なのだ。
人間は、理性的人間と、感情により左右されやすい人間に大別できる。
長期的目標をしっかり定め、良く物事を考慮し、自分の不合理性も認めることで、理性的人間に近づける。
それに対して、理性に弱点のある人は、ややもすると、恨み辛みと憤りに、心が振り回されてしまいがちだ。
原因の全てを他人のせいにして、感情的に行動を起こし、極端な自己防衛に走りがちだ。
利己的で意地悪な人に遭遇した場合、感情を上手く統制するには、いかにすべきか。
十分時間をとり、冷静に理性を働かせて、 相手の気持も忖度して、最終的に自分の行動を決める。
それに対して、感情に負けてしまうタイプの人は、相手を秘密裏に羨ましがり、 他者に責任をなすりつけ、自己を哀れみすぎる。
例えば、人が「怒り心頭にきた」と叫ぶ時、根本的に、「なぜそんなに怒ってしまったか。」、分からない場合が多い。
怒りの対象そのもの以上に、本当はもっと深い、隠れた理由がある場合が多い。
人間は、しばしば、自分に対しても嘘をつく。誰でも、自分の中に、野蛮で未熟な未知の人間が共存している事実に、気づいていない。
例えば、うつ病患者の場合、 理性的に調査をすると、子供時代の苦しい経験が、端をはっしている場合が多い。
怒りはもちろん、感情の一種である。 心に沸き起こる感情の、本当の原因を、良く理解している人は少ない。
もちろん、人間は社会的動物であり、グループの中で生きる場合が、ほとんどだ。
人間が言語を獲得する以前から、他の動物達と同様、顔の微妙な表情の変化、身体全体の動きから、相手の気持を察する能力が備わっていた。
人間はすべからく、仮面を被っていながら、被っていることを認めようとはしない。
人間の特性の多くの部分は、薄暗い闇に隠れてしまっている。
「己を知る」とは、究極的に、その見えない部分の、心理の存在を、はっきり認める事が重要なのだ。
根本的に人間は、元来、動物であり、動物的行動をしがちなのだ。
生物学の進歩は、目を見張るほど早い。 深く人間の本質を、しっかり理解することで、 感情の奴隷にならなくてもすむ。
人間は、社会的動物であるから、所属するグループの雰囲気に、のまれてしまいがちだ。
人は、「自分を理解している。」と、うそぶいているが、 実際は、「自分が何者か。」も、ろくに理解していないのが現状だ。
現代の神経科学の進歩で、自己をより客観的に理解する道具は、増えた。
本当の自己を、より正確に理解する事により、周りの世界への見方も、変わる可能性大だ
最新の神経科学によると、人が行う行動の95%は無意識の範疇に入る。
もう一つ大切なことは、人間の脳は、どの人の頭であっても、とても類似しているということだ
先祖をたどりゆけば、発端は同じなのだ。人間である限り、全ての人が、暗い影の部分も持っている。
優越感に浸りたい欲求が強いのも、人間の特色であるが、どんぐりの背くらべで、根本的差異は多くない。
著者は自然科学の父的存在であるニュートンを例に挙げている。 ニュートンは投資では大失敗をした。
ニュートンの理性より、ニュートンの「心の底に蠢いていた欲」という、感情に負けたのだ。
人間は、所詮、操り人形にすぎない。 みえない隠れた人形使いが、 我々人間を操っている。
広告宣伝などは、 人間の心理を逆手に、自分達の利益増加に邁進んしているのだ。
大切な事は、感情が湧き起こっても、直ぐに行動に起こすべきではない。
時間と距離をおき、冷静沈着に、理性的に考察の上、判断を下す。
また、人間に必要なのは共感する力だ。 人は自分に注目しがちである。 いわゆるナルシシストが多すぎる。
他の人の立場に立って考えてみることは重要だ。 自己愛が昂じると、身体の毒になる。
また、他者を、「自分の目的達成の道具」と、みなすようにさえなってしまう。
21世紀を 生き抜き、自分の才能を開花させるためには、人間は、元来、ナルシシストである事実を認める。
その上で、自分の殻にこもらず、そこから出る努力をすべきだ
人には暗い闇の部分が存在することを認識すべきだ。 人間は誰でも自己評価は甘すぎる。
自分を理想化しがちなのだ。 自分の影の部分の存在を、しっかり認めることが重要だ。
22年の間隔で、世代が変わる。 同世代同士は、同世代同士の見えない強いつながりがある。
違った世代間の理解は難しい。 育った時代が違うし、時代ごとに価値観もずれてゆく。
そのような状況で大切なことは、自分の感情を良く知る努力を、常に怠らないことだ。
そして、誰でもが持っている自己愛を、他者に対する共感に変えることこそ最重要案件だ。
誰もが仮面を被っている事実を認め、仮面の後ろにいる、本人を知ろうと常に努力することも大事だ。
全ての物事を、広角度的に電子望遠鏡をまるで使うような気持ちで、客観的に観察する態度が大切だ。
誰にでもある自己防衛的態度をしっかり肝に命じて、行動の指針とする。
自己の態度を変える事で、「状況をも変えうる」ことを真に理解することで、人生の道は広がる。
自分の暗黒面の存在も認め、自己とは、「元来弱い」と言う、事実を看過することも大事である。
自己の限界を知り、目的意識をより鮮明にすることも重要だ。
仲間内でも、足を引っ張る傾向の強い人間もいるが、それに抵抗できる強さを持てるよう、日夜精進することで、道は開ける。
表向きは友好的であっても、敵意が隠れている場合あり、それは誰でも、いつかなんらかの状況で経験しがちであることを、自分に言い聞かせて、 対処法を模索しておく事も大切だ。


