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人生の醍醐味 122

Image by Olia Gozha

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エヘン、 吾輩は社長である。  おっと間違えないでもらいたい。 世間で言ういわゆる会社の社長という訳では無い。


自分の人生の総責任者という意味で、私は社長であると言っている。  会社が破産すれば、社長が責任を取るように、 自分の身体に不具合がで始めれば、「自分の責任である」と言う意味で、私は社長なのである。


総責任者として、探偵の仕事もする必要が出てくる事もある。 体の調子がいつもと違う場合、原因究明の責任も自分にある。


「いつもと違う事をしただろうか」と、思案してみる。 寝不足が原因の場合もある。その場合は、 気づいた段階で、早めに床につき十分寝るに限る。


全然知らない人が作る食事を、レストランで食べた場合、お店によっては具合が悪くなる場合もある。  そんな場合は、予防手段として、二度とそのようなお店に、足を運ばない。  


原因が単純に一つとは限らない。 しばしば原因不明で、具合が悪くなる場合もある。


途端に、 年齢も年齢だから、「ああ、死も近づいた、覚悟をせねば」と、悲観のどん底に気持ちが沈む。 


具合の悪い時の、対処法を考え出し実行するのも、総責任者である私だ。 瞑想で学んだ事の一つは、自分の心を客観視する事だと思う。


普段なら毎日外出して、一万歩は歩く人間であるが、 身体の調子により、久しぶりに部屋でのんびりゆっくり休むこともある。


便利なインターネットで、朗読文学の存在を知り、夏目漱石の「心」に耳を傾けた。


最近、時事英語ニュースや、講演会に聞き入り過ぎ、地球の温暖化、アメリカの問題、福島原子力発電所の問題、難民、世界情勢など暗いニュースが多過ぎて、身体の中から生きるエネルギーを吸い取られたように、気が滅入っていたので、それも、「具合の悪さに拍車をかけたかも」と、疑いさえした。


祖父母の時代の人である、漱石の私小説を新鮮な気持ちで聞いた。  ホノルルに来て一年、時間的に猶予があるお陰で、朝から朗読文学に耳を傾けて過ごせる自分を、幸運だと思う。


小説の中で、先生と呼ばれている主人公が同郷の友人の書生時代を、回顧する場面がある。 漱石もそうであったが、この青年も、幼少の頃里子に出された、複雑な過去があった。


小説の題材は、 人間の心は、 どんなに良心的な人であれ、 場合によっては自己防御のため、汚い手を使う時もある。 人間の心の弱さ、強欲さなどをじっくり分析し、観察している小説だ。


明治時代が文脈に溢れている。 当時の女性の地位は、現代より低かった。東大に通う書生二人の会話は、21世紀にもまだ生き延びていて、わたしには面白い。


アメリカの東海岸在住の折は、日本から研究生が滞在した事があっただけに、 余計興味深く耳を傾けた。


全般的に言える事は、時代の違いでもあると思うが、 過去にこだわり過ぎるように思う。 思い詰めれば、 神経質にもなるのは当然だ。 


過去は過去として綺麗に水に流し、今の時間を、大切に生きるのも、一方法かも知れない。


人生には、 個人ではどうにもならない事が多すぎる。 夏目漱石の場合は、母親が高齢出産で、しかも、子沢山の末っ子に生まれた漱石は、里子に出される。明治時代であるとは言え、しかも、漱石は50歳そこそこで死んでしまう。


20世紀と21世紀にまたがって、78歳までたまたま偶然生き延びたわたしから見て、心の弱さを感じてしまう。  はっきりと愛を打ち明けられないために 、友人同士で恋敵になり、意思疎通不足から、友人が自殺してしまう。  


生き残った先生と呼ばれている「心」の主人公は、良心の呵責に苦しみ、最終的には自殺してしまう。  気持ちの行き違いが、人の命を奪った事につながる。


「心」の朗読を聞いていると、祖父母の家に住んでいた時代が、目に浮かんで来た。  私の場合は田舎と言っても、仙台であるが、 私の子供時代は、昔の風習が色濃く残っていた。 遺産相続問題も、騙されたり、騙したり、お金が絡むだけ、人間の心の醜さが表面に出やすい。


ホノルルに住んでいるのに、 数時間ぶっ続けに、朗読文学を聴いているうちに、 我が身体も心も体も回復した。  また、散歩ができそうだ。




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