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人生の醍醐味  119

Image by Olia Gozha

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早朝の散歩が好きで、 週に一、二回はマジックアイランドの、西側の木陰にあるベンチに陣取って、ゆっくり地平線を眺めているのが好きだ。 


そんなある日、乳母車を引いた白人の男性が、 「ここに座って良いか」と、声をかけてきた。


「勿論ですよ、 このベンチは 公共のベンチですよ。」と、私。


その男性は「バージニア州から息子夫婦の所へ遊びにきている」と言った。


「あら、 私は三十五年ほど、 ワシントンD.C.の郊外であるベセスダに住んでいたので、 ポトマック川の南側にあるバージニア州にもよく行きました。」と言った。


その男性は63歳で、退職したばかりだそうだ。英会話練習の要領で聞き出した事実は、 六年ほど米国陸軍の軍人になり、軍需をヘリコプターで運搬する任務についていた。


退役軍人になり、 フォード自動車会社で10年程勤務、アマゾン会社でも退職まで働いたそうだ。


仕事を通して、 品質管理の専門家であるデミング博士の話しをすると、さすが、 もとフォード自動車会社の社員だけあり、反応が良かった。


米国人のデミング博士は、自国の自動車会社上層部等に、 製造業の場合、「いかに品質管理が重要であるか」に関する講演を、何度も統計的手法を用いて説明したが、 馬耳東風的ムードが支配していた。 


一方、 少し遅れてデミング博士が、日本で自動車産業の上層部に、同じように品質管理の重要さを講演したところ、聴衆は全員熱心にメモを取り、それぞれ自社に戻り、デミング博士から学んだ事を実行に移した。


ホノルル在住の息子さん夫婦は、「お父さん、もう退職したのだから、ホノルルに越しておいでよ。」と勧めるそうだ。


でも、 バージニア州在住のその男性は、自分の92歳になる父親がナイヤガラの滝に近い、ニューヨーク州の北部に住んでいるので、ハワイへ移住すると、「年老いた父親と距離が離れすぎる」ので、躊躇しているとのことだった。


青い目をした、生まれてまだ三か月の赤ちゃんが、平和な眠りから目を覚まし、じっと私を見つめた。


我々はナノテクノロジー、人工知能、無人ドローンなどの話を、赤ちゃんが眠っている間続けていたが、 発達中の赤ちゃんの脳細胞、神経細胞は、本人がまだ無意識にせよ、 多くの情報をスポンジのように吸い取ったに違いない。  


三か月目でこの赤ちゃんが見た、大勢のホノルル在住のアジア系アメリカ人も、21世紀を生き抜き、 22世紀の初頭も見届ける可能性のある赤ちゃんに、何らかの影響を与えるに違いない。


寸時でも、かわいい赤ちゃんに会えて、我が心は踊り、 幸せ感を味わいながら帰宅した。


少なくとも、赤ちゃんの間は、人種差別や皮膚の色による差別と言った概念は、赤ちゃんの脳細胞、神経細胞に書き込まれていない。



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