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人生の醍醐味 92

Image by Olia Gozha

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1939年に出版された「怒りのぶどう」の朗読を聞いた。  1962年にノーベル文学賞を受賞したスタインベックの作品だ。


1929年の大恐慌、旱魃による農産物の大被害等で、オクラホマ州の小作人は農地を追われてしまう。


働き手を求める宣伝ビラを頼りに、東西に走る国道66号線で、ジョアード一家(Joads)は中古のトラックに、身の回り品と大家族を乗せて、カリフォルニア州を目指した。


オクラホマ州の小作人は、銀行から借金をして、農地を借り、農産物を収穫、出荷して何とかギリギリの生活が成り立っていた。  


運悪く、1929年の世界恐慌で、アメリカ経済は破綻、その上、オクラホマ州を含め、中西部は大旱魃に襲われ、農産物もほとんど全壊した。


抵当に入っていた農地は銀行に没収され、住む家も無くし、 収入を得る手段も無くしてしまった小作人の数訳33万人が、カリフォルニアに夢を託して大移動した。


カリフォルニア州に、死ぬほど苦労の末到着しても、農作業の担い手が多過ぎる為、手間賃は下がるばかり。 


この話は、「20世紀前半の昔話」と、安心はできない。合成生物学、情報技術、生命工学、ロボット工学等、21世紀は技術革新が著しい。 


昔だったら、運転手のいない車が、高速道路や街中を走り回る時代が、直ぐそこまで来ている等、誰も信じなかっただろう。  


トラック運転手、バスの運転手、タクシー運転手などの仕事が、消えて無くなる可能性が大きい。


オクラホマ州の小作人達が、働く場所を求めて大移住したように、ここ数十年中に、運転手達が仕事を求めて、大移動を開始するかもしれない。


職場より、働き手の人数が多すぎれば、賃金が下がり続けるのは、簡単な資本主義経済理論だ。


ピストル、拳銃保持が許されているアメリカ、飢餓に苦しむようになれば、食べ物の取り合いで、殺人が起こらない保証は何処にもない。


カリフォルニア州に、大移動を果たしたオクラホマの小作人達の多くは、1960、1970、1980、1990年代と、アメリカ並びに世界経済の大波に乗り、中産階級に落ち着いた人も多い。


だが、21世紀に入り、もう20年が過ぎた今、アメリカを含めた世界全体の技術革新で、「職を無くす人々の数は、うなぎ登りには増えない」と、誰が保証出来るだろう。


そのような観点から、 「怒りのぶどう」を読むと、80パーセント残っている、21世紀を生きる人々の事が気にかかる。


78歳になり、 時間だけは十二分にある身分になり、15、20時間かかろうが、のんびり朗読に耳を傾けられる。 


スタインベックの「怒りのぶどう」は、ヨーロッパから18世紀、19世紀に移住した人々の物語だ。


白人同士の凌ぎ合いであるが、21世紀に入り20年が既に過ぎ、技術革新が急速に進む事で、少数の持てる者が、ますます巨大な権力を保持し、99パーセントが貧困に苦しむ地獄絵が、地上で展開するかも知れない。




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