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ホノルルに来てから、 何度も、ベンガル菩提樹のお世話になった。
枝を大きく広げ、日陰を作ってくれている。 その日陰に入ると、 暑さが緩み、ほっとする。
木の下で、休みながら、海風を体全体で受け入れる快感。 菩提樹は、どこにあっても、 濃い影を形成している。
観光客や私のような、外部から移り住んだ住民、ホノルル生まれの方々など、様々な人々が、ベンガル菩提樹の、恩恵を受けている。
小鳥たちも、長旅の羽を休める。 小鳥たちは、夕方になると、菩提樹の枝に帰り来て、しばらくは、賑やかに鳥たちの雑談に、花を咲かせている。
それに対して、 自分はどうだろう。 生きているだけで、そこに、ただ存在するだけで、誰かの役に立っているのだろうか。 苦笑しか、対応しようがない。
長い人生で、苦しかった事も、悲しかった事も、悔しかった事も、嬉しかった事でさえ、久遠の彼方に消えてゆく。
恨みに思う事もなくなった。 悔し涙にくれる事象も消滅した。 怒りもない。 ないない尽くしだ。 何と有り難いことだろう。
ただ、日々好日の気分で、過ごせる幸せよ。 このように導いた自分に感謝する。 もちろん、自分一人で、全て出来た訳ではない。
幸運が重なった可能性大だ。 萬の神のお助けも、多々あったに違いない。
人生最後のひと時を、幸せで、平和な気分で過ごせる事を、心から感謝する。
後何日、何ヶ月、何年残っているのか、本人の私もわからないが 、ホノルルで、色々工夫しながら、日々を過ごせば、 毎日幸せに過ごせると確信している。
大木の命は長い。 多くの人々の人生を見続けているに違いない。 人間の傲慢さを何と思っているのだろう。
地球を自由自在に使って、当然と思っている人間達。 大木が、もし人間の言葉を使えれば、どんな抗議をするだろう。


