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綱渡りの人は、身体の均衡を保つことがとても大切だ。 人生においても同じ事が言えそうだ。
人と接する事と、一人でいる時間のバランスも、重要だと気がついた。
社交性を維持する努力も大切であるが、所詮、人間は一人でこの世に生まれ、一人であの世に旅立つ宿命を持っているのであるから、 一人でいる時間を楽しめる人間に成長したいと思う。
ホノルルに来て一年目は、ホノルル生活に慣れるため全力投球した。
次の二年間は疫病蔓延のため、余儀なく住民全員が孤立した生活を余儀なくされたが、やっと普通の生活が徐々に戻って来ている。
本土から飛んできた私は、人生のバランス感覚維持の為にも、人との関わりを増やす努力を強化する必要がある。
手始めに、ラジオ体操と気功のグループに参加し始めた。 昔取った杵柄で、初心者用無料英会話教室も始めた。 書く事が好きなので、文章のグループも新設してみている。
娘と数年前に行った、奈良の東大寺の別格東大寺がホノルルにもある事を発見、日曜日の予定としてみている。
長年、カトリック教徒の母親に育てられた夫と、米国本土に住んでいた。
日本のお寺は、ニューヨーク州の郊外に禅寺がある程度で、米国東海岸には、私の知る限り伝統的仏教寺院はなかった。
そのため、ホノルルで別格東大寺を発見した驚きに背を押され、日曜日ごとに通う事にした。
若い住職様に、「私の葬式の世話をお願いできますか。」と、聞いたところ、快諾して頂いた。 これで一安心。
だいぶ前であるが、父が膵臓癌になり、入退院を繰り返していた時、 日本に行き見舞った。
隣部屋で、父が母に「葬式用に銀行からお金を下ろしておけ。」と、言っている声が聞こえた。
人は一人、一人自分の最後の後始末をする必要がある事を父から学んだ。
週に二日は、ほんの少しに過ぎないが、無料英会話教室を開いている。 それは「世代の違う若い方々に会う事も大切である。」と、思うからだ。
今まで知らなかった花札で遊ぶ会にも、週一で参加してみている。
一家団欒の時に、花札で遊ぶ家族も多いようだ。我が家は、たまにトランプや百人一首で遊んだが、花札はしなかった。
ホノルルに住む、日系アメリカ人の団体主催の花札趣味の会で、大勢の日系人とゲームを一緒にできる機会の到来に感謝している。
週6日間、毎日短時間にせよ、誰かと会える予定が出来上がったのはありがたい。
社交が過ぎると、エネルギーを消耗し過ぎるので、 ホノルルの地の利を十分生かして、 散歩も毎日楽しんでいる。
社交と孤独のバランスも人それぞれだ。 今のところ、 私の場合は75パーセントは一人の時間で、25パーセントは人と出会うよう目標を立て、一番心地よい割合を 模索してゆきたい。