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人生の醍醐味 62 殺し屋

Image by Olia Gozha

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ニューヨークタイムズ紙のベストセラーである、ジョン パーキンズ著、「新版、経済専門家である殺し屋の告白」は、2016年に出版された。


これは推理小説ではなく、パーキンズ氏の実際の経験をもとに書かれた、告白書である。


プレップ スクールと言われる、授業料の高い、私立の有名な高等学校で勉強できるほど、裕福な家庭に生まれ育った著者の、一種の懺悔録である。


彼は有名大学を卒業後、新社会人になるが、同世代の青年諸君同様、どんな夢を描いたのだろう。


同年代の多くの若者達は、未来は「大金持、権力、そして美しい異性を手に入れる。」ことを、目指した。


偶然、NSA(アメリカ国家安全保障局)や、CIA(中央情報局) 、その他の機関と関わりができた。


まず、青年協力隊の一員になり、南米のブラジルと、その周辺国にまたがる熱帯雨林である、アマゾンに派遣される。


もともと、 冬は積雪のある、アメリカの北東部で育ったパーキンズ氏は、あまりの温度差に驚くが、若さゆえ、直ぐに、アマゾンでの仕事に打ち込む。


その後、NSA やCIA関連組織の、コンサルタント会社に、経済専門家として入社した。


努力の甲斐があって、 主任経済専門家に昇進した。 彼の仕事の内容は、詳しく本の中に記述されている。




おおまかに言えば、世界中の発展途上国に対して、コンサルタントとして、その国のインフラ整備、油田開発等を、提案する。  


喉から手が出るほど、欲しいインフラであるが、発展途上国であるから、そのためのお金があるわけがない。 


経済の専門家として、世銀、IMF(国際通貨基金)、その他の国際機関を通して、融資を受けることを推奨する。  


その時も、実際に必要な額を、大幅に上回る数字を提示するのが、コツだ。 


また、しばしば、発展途上国側は、少数の権力者だけが、このような交渉で、巨大な富を懐に入れ、一般市民は、置いてきぼりである場合が多い。


ダムの建設、道路の整備、油田開発などに関して、もう一つ条件をつける。  実際の建設を、米国系企業に、発注せねばならない。


結果的に、発展途上国側は、高金利の多大な負債に苦しむことになる。 


最終的には、発展途上国の国民の血税から、その借金を長年の間払うことになる。


社会福祉び、教育制度の近代化などを後回しにしても、払いきれない状況下、例えば、油田の経営権を、債権者側が獲得してしまう。


また、例えば、道路整備、水道の設置等、普通は政府管轄であるが、 民間に移譲するようにも働きかけてしまう。


発展途上国の指導者全てが、穏便にそのような経済専門家の御意見を、鵜呑みにするわけではない。 


中には、背筋を正して、 そのような申し出を拒絶する場所もある。


となると、今度は共犯者の出番だ。 著者のような経済専門家が、直接手を下すのではない。


共犯者がいて、言うことを聞かぬ、その国の指導者を、 事故のように見せかけて、暗殺までしてしまう。 




高齢者になり、はじめて真実を、告白したのがパーキンズ氏だ。 


ひとりの人間は、時とともに変化してゆき、自分の過去を、悔いる場合も多々ある。


彼は百八十度方向転換し、今では自然保護、南米の原住民の生活向上運動に、積極的に関わっている。


資本主義そのものが悪いのではない。  利益追求のみに走る形態の、資本主義が問題なのだ。


我々一般市民は、より良い企業を、育てていかなければならない。


再生可能なエネルギー、環境保全、労働者の権利を保護するような企業にこそ、積極的に投資する必要がある。  


もちろん、企業は、労働者、消費者などとして、我々を必要としている。 


「それを逆手に取り、我々が望む方向に、企業を導く責任も我々にある。」と、著者は訴えている。


我々は、現代の技術を駆使して、企業に積極的に働きかけることも重要だ。 


インターネットの接続で、どんどん個人の意見を、直接企業に伝えることで、 悪い面を極力減らして、良い面を伸ばす必要があるのだ。


21 世紀に入り、21年が過ぎようとしている。最近、米国では、大学あるいは大学院卒業者の中には、多額の学費を払ったため、大きな借金を抱えている若い人々が多い。


誰でも、早く借金を返してしまいたい気持ちは強い。 


若かりし頃のジョン パーキンズ氏のように、金、権力、美女の誘惑に、引き摺り込まれる人は、後を経たないのではなかろうか。 


老後、どんなに反省し、方向転換しても、 発展国の国民に与えた損害は莫大であり、その傷痕は容易に消えないだろう。

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