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人生の醍醐味  39

Image by Olia Gozha

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アリゾナ州に出張が決まった。  2003年、私は61歳になっていた。 不思議とその時期から、高齢者問題関係の通訳業務が増え始めた。


アリゾナ州の州都である、フェニックス市に到着した。 アリゾナ州庁で会合があり、35キロほど離れたサン市に車で移動。


サン市は1960年に、最初のモデル住宅を5種類建て、見学者を呼び寄せ、 新住宅の購入を促した。


サン市地区巨大開発の趣旨は、55歳以上の市民用の、退職者用コミュニティを出現させるのが、目的であった。  


それ以前のアメリカでは、退職後は、のんびり自宅で過ごし、社会から離れ、人間関係も希薄になるというのが、退職者の宿命と考えられていた。


それに対して、1960年に、55歳以上の退職者が趣味を楽しみ、社交を楽しむ地域として、サンシティ開発が始まった。


2003年に、日本の視察団が訪れた時は、サン市ができてすでに、42年の月日が流れていた。 最初に入居した人の次世代が、入居し始めていた。


出来立ての頃は、 55歳以上で、元気な人々が入居した。 市というほどであるから、とても大規模な開発で、3部屋も寝室のある一戸建て住宅も焔々と続いていたし、コンドスタイルの7階建ビルもずらりと並び、入居希望者は、自分の預金と相談して、自由に決められた。  


サン市は、共有の施設が多い。  住民達の利便性を、十分考慮して作られている。 普段必要な食べ物、衣類、家具などのお店がサン市内にあり、図書館、本屋さんもあった。



大型プールが数カ所に点在している。 陶芸教室、ヨガ教室、集会場も完備していて、自分の趣味を、心おきなく楽しめるよう、工夫されている。


1961年から、実際の売り出しが始まり、 その年中に1、700戸も完売する程盛況だった。


でも、 時は流れる。 20年後は55歳で入居した人でさえ、75歳を迎えた。  ましてや、はじめに買った人々が、全員55歳ではなく、 中には60歳、 65歳の人も結構いたのだ。20年後、 80歳、85歳に突入する。


もちろん、元気な人も多いが、 中には残念ながら、病魔に犯される人もでてくる。


始めの開発計画には、葬儀場も、病院もなかった。  「元気で楽しく」を売り物にしたので、 病院や葬儀場、お墓などは後回しにした。


入居者が増えるにつれ、まず、病院が近くにない不便さを住民が感じ、多種多様な力添えと寄付などで、 立派な病院がサン市内に出来上がった。 


葬儀場の建設、墓地も作られた。  日本と違って  何々家の墓と言う形式では無く、 アメリカでは一人一人寝た姿で、土葬される文化が色濃い。 


高地は別格であるが、 フェニックスや サン市は夏の太陽は容赦ない。 葬儀場建設、土葬用の土地の確保も急を要した。


サン市の問題はまだある。1961年の初売りの時は全て新しく、 入居者も55、60、65歳と元気な人が殆どだった。  


けれど、建設後、42年の月日が流れ、どちらを向いても年老いた高齢者が目立つようになり、空き家は、誰かの死を露わにし、 買い手がなく、空き家が増えているとの説明。


我々は、サン市を、最初に車で一通り見て回り、集会場で質疑応答の時間をもった。



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