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歩きは思索の時間でもある。 また、禅宗の経行のように、無念無想になる機会でもある。
ホノルルは年中、日中は日射しが強い場合が多く、散歩には不向きである。
強い陽射しを避けようとすると、太陽が西に傾く夕方になってしまう。
とは言え、ついついパターンが出来てしまい、同じ時間帯に、同じような場所を、歩く傾向に気がつくと、 意識的に、新たなやり方を取り得れようと努力する。
例えば、朝7時半に、人通りのほとんど無い街中を、西に向かって、テクテクと歩き続ける。
歩く時間帯と歩く場所を変えるだけで、心に新しい刺激が忍び込み心地よい。
もともと、ホノルル移住を決定した要因の一つは、市バス(the bus)が、早朝から夜遅くまで、割と頻繁に運行しているからだ。
ではあるが、格安で便利とは言え、バス利用頻度が増えれば増えるほど、私が歩く機会を喪失して、運動不足になる危険が有る。
私にとって、歩きは軽い運動でもあるのだ。気分を爽快にしてくれるだけではなく、 人間という動く物である私は、健康維持の為にも、軽い運動は、必須条件だと信じている。
健康を保ちたい一番の理由は、 医療費が、滅茶苦茶高額である、アメリカでの経済性を考慮した結果、導き出した私の結論だ。
死は誰にでも来る。 自分だけが、例外などと考えている訳ではないが、死の寸前迄健康を保ち、寿命がきたら潔く死を迎えたい。
ニッコリと自分の死と対面するために、 元気な内に、自分と相談しながら、日々を有意義に過ごす努力をしている。
小、中、高と仙台にある、祖父母の茅葺の家でのんびり成長した関係か、自然が大好きで、自然の中にいるとほっとする。
歩いて海岸まで行ける、ホノルルでの生活は私に合う。街中を歩いていても、北側に緩やかな山々をいつでもみれる。 海風が吹き抜けて、散歩中肌が気持ちいい。
雨が多い関係か、樹木が生き生きしている様子が、常に目に飛び込んでくるのも、心を喜ばせてくれる。
野鳥達も、人間を恐れる様子もあまり無く、近くまで近づいて来るのが嬉しい。
太平洋のど真ん中にある、地図で見ると小さな島であるが、ホノルルでは、多種多様な言語が風に舞う。
それぞれの生き方を尊重する事で、ハワイ独特の平和が保たれている。 その流れに、私も乗りたい。