統一教会信者は、ターミナル駅の駅前に立って、道行く人を勧誘し、壺やハンコを買わせたり、盲導犬だの世界の孤児だのに募金をねだったりといった活動を行うことがノルマにされている。
インチキな壺を無理やり売りつける行為はどう見ても犯罪だ。これをマインドコントロールされている状態だからと弁護する識者は多いようだが、見ている限り、私の妹は洗脳されてこれをやっているわけではない。彼女は自分が犯罪行為に手を染めていることを自覚している。政治家に守られているので犯罪を犯しても罪に問われることはない。捕まらない自信があれば犯罪は楽しい。それでやっている。
20年以上昔の話だが、父が死んでから、妹の夫が変な義務感に取りつかれ、「ぼくが兄弟の中で一番年上だから」と、なぜか私たちを仕切るようになった。私たちの祖父母の位牌を勝手にお焚き上げしようとしたり、遺言執行の打ち合わせに出席しようとしたりした。それが頼もしく見えたらしく、母などはむしろそれを歓迎し喜んでいた。
私は全身の毛が逆立つほどこれが嫌だった。ほとんど赤の他人である妹の結婚相手に、何で私が命令されなきゃならない?意味がわからない。考えた末、妹の配偶者に対抗したくて、ヤフーパートナーで結婚相手を探していた。
ある時、妹が真剣な顔で私に
「結婚したいんでしょ?結婚して幸せになりたいんでしょ?幸せにしてあげるから私の言うことを聞いて。」
と言った。
私は呆れて
「結婚したら幸せになるという考えは完全に間違っている。寧ろ結婚したら不幸になることの方が多いと思うよ。
私が結婚したいのはね、アンタのダンナに仕切られてるのが嫌だからなの!長女の婿だったら、私の旦那が兄弟の中で一番年上ってことになるでしょ。そうすればアンタ達夫婦は私の旦那の言うことを聞かなければならなくなるでしょ。それが狙いなの!」
と返してやった。
妹は一瞬ギョッとした顔をして息をのみ、完全に沈黙し、そして二度とその話をすることはなかった。
当時私は、妹がはまった宗教が統一教会であることを知らなかった。母が私に隠していたからである。この時は単に「幸せになりたいから結婚する」という詐欺師のようなフレーズに反感を覚えて反論しただけだった。
だがこの反撃は実のところ本物の危険から私の身を救った。今思えば、これは合同結婚式への勧誘だったからだ。
教会に寄進するために母の財産を狙っていた妹は、邪魔な私を韓国の田舎に売り飛ばして厄介払いしようと考えた。ところが「アンタ達夫婦は私の旦那の言うことを聞かなければならなくなる」と返されて、自分たちが韓国の貧乏農夫に命令されている姿をリアルに想像してしまった。まるで”呪い返し”のような光景。ミイラ盗りはミイラになることが確約されたのでこの話をするのは止めにした、というワケだ。
妹は、自分の利益のために自覚をもって犯罪を犯している。合同結婚式のからくりを完全に理解した上で、そういう意図をもって私を勧誘してきた。
違和感を感じて反論しておいてよかった。自分の”詐欺探知アンテナ”の性能を褒めてやりたい。
彼女が自分勝手なのは昔からわかっているし、私は母と違って彼女の言うなりになることはない。なので、腹は立つがこの話は聞かなかったこととして今は穏やかに振舞っている。たぶん妹もかつて私を罠に嵌めようと画策したことは忘れている。
政治家に守られているので逮捕されることはないとしっかり計算した上で、今でも毎週日曜日、妹は被害者を求めてどこかの駅前で立チンボするのを止めていない。


