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澄んだ水が流れる、浅い川の左岸を足を濡らしながらゆっくりと歩く。冷たく感じられる水が心地よい。周りの木々を見上げる。芽吹き始めた新緑に早くも夏の始まりを感じる。
しばらく歩くと、左岸の少し下がった所にお寺が見えた。何気なく立ち寄ってみようと思い、山門をくぐる。門には「如舟寺」という額が掛かっている。
本堂に入ると、仏像ではなく赤い顔をした仁王像のような本尊が安置されている。なぜか左側の顔から肩にかけて、耳、頬、肩の辺りがひどく朽ちている。このお寺の住職が読経をしている。読経が終わったあと、住職に声をかけられた。何と言っていたかは思い出せないが、非常に温厚で感じのよい人だった。
お賽銭がわりに千円札を出すと、住職はお礼に古い戸棚の引き出しから、濡れてくっついた昔の百円札の束を取り出し、数枚の百円札を慎重に引き剥がして手渡してくれた。
それから、紙のアルバムを取り出し、昔のお寺の白黒写真を一枚一枚見せてくれた。このお寺は昭和21年頃から、ほとんど変わっていないそうだ。そのあと、住職は僕にこのお寺のお札を下げ渡し、寺院に参拝するときは、必ずお賽銭を忘れないようにとにこやかに諭した。
一週間くらい前に見た不思議な夢。「如舟寺」っていう寺は、どこかに本当にあるのかな。川の近くにある「舟の如き寺」ってのは出来過ぎなんだけど。
Googleで調べると、それらしきお寺はヒットせず、芭蕉の弟子の中に大井川のあたりに住んでいた如舟という雅号を持つ人がいたらしいことがわかった。
この一週間、この夢の意味をいろいろ考えてみたけど、よくわからない。よくわからないけど、何か重要な意味があるような気がする。
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