大学時代にほとんど学校も行かなかった。にもかかわらずなんとか卒業できることになった。
どれだけ学校に行かなかったのかといえば、多分、半分くらいしか行っていない。それでも卒業できることになった。
突然、周囲が就活をし始めた。それで初めて、就活というものをしなければならないのか。。と、思った。
何しろ、親戚にも大学なんて出ている人はいないし、クラスの友人ともほとんど連絡を取っていなかったので、全く情報も無かったのだ。
インターネットも無かった。そういえば自宅にリクルート社から段ボール箱が送られてきていたが、全く開けていなかった。見ると、ハガキの束で、それが今で言うエントリーシートである。
文学部なので、とりあえず、マスコミ、出版などの会社いくつかにハガキを出してエントリーした。が、時遅過ぎたのか、全く返事が来なかった。
そう、色々と遅過ぎたのである。
普通の人はもう就職先が決まって内定が出ていたのだ。
別に、このままアルバイトでもしようかとも思ったが、せっかく親に大学まで出してもらったし、やはりどこかに就職しようと思った。
もうハガキのエントリーは遅いとわかったので、電話をすることにした。会社に直接電話。笑える。そんな奴、いないだろう? コンビニのバイト探しているんじゃないんだから。。。
とりあえず、会社四季報をペラペラめくり、会社に電話した。狙いは、1部上場企業。なぜ1部上場かといえば、せっかく明治大学を卒業するし、1部上場なら親も喜ぶかと思ったから。
次の狙いは、無名の企業。例えば、上場と言っても、一般人には無名の企業はたくさんある。よくテレビのCMで流れていて、誰でも知っているような企業は、きっと人気で、もう遅いかと、アホなりに考えていた。
次の狙いは、理科系の営業職。理科系の企業はきっと理科系の人がたくさん集まっているだろうと思った。しかしながら、営業職は、別に文系でもなんでも良いわけで、おそらく、文系の人があえて理科系の企業を志望することも少ないだろうと思った。自分は、ど文系(文学部文学科文芸学専攻)であるので、理科系の企業にとってはむしろ珍しいからとってくれるかもしれない。。なんて、淡い期待もあった。
つまり、なるべく競争の無さそうで、なおかつ1部上場企業を狙ったのだ。
・1部上場
・一般人に有名ではない
・理科系企業の営業職
このキーワードでリストアップした企業に、大学にある就職課から電話をかけた。就職課というのが、学校にあることさえ知らなかった。しかも、明治大学の就職課は強いらしい、と、後から聞いたけど、そんなの、俺には関係のない世界だな。と、思った。
就職活動の時期は終わってはいるものの、まず、1社目に電話した。
「明治大学4年の●●と申します。人事の採用の方をお願いできますか。」
今思えば、大学生が上場企業の代表番号に電話をして就活するなんて、本当にアホさ加減に涙が出てくるくらい、アホである。
その会社は、とりあえず、履歴書、職務経歴書を持参してくれという返答だった。やはり、マイナーな企業なので、それほど就活生も集まっていなかったらしい。次の日の午後に、アポイントを取った。
次に電話した会社。ていうか、ほとんど電話にも出ない会社がほとんどだった。が、なんとか次の会社に繋がった。
「明日の午前中に来ていただけますか? 僕も明治大学なんです!」
という、人事課長だった。
ということで、次の日の午前に1社に行き、午後にもう1社に行くことになった。なんだか、就活っぽくなってきた。
次の日
午前10時に1社目に到着した。受付を通って人事の部屋に行くと、昨日電話に出た人事課長という人が、その会社の説明を色々としてくれた。とてもありがたかった。
聞くと、新卒はほとんど決まっていたらしく、あとは人が来たら、採用枠は一応あるという状況だったらしい。
会社説明を熱心に聞いていたら、課長からお昼の予定を聞かれた。お昼というのは、お昼ご飯である。
当然、予定なんてあるわけないので、予定がない旨を伝えたら、昼食に連れていってくれることになった。
なんと!
上場企業の人事課長が、たかだかひょっこり現れた大学生にサシで会社説明をして、そしてランチに連れていってくれるなんて。。。
そういう時代だったのだろうか。
で、近所にある、都心の寿司屋に連れていってくれた。緊張したけど、寿司を食べた。美味かった。
人事課長が、色々と世間話をしてくれているうちに、店に、初老の紳士が入ってきた。
慌てて立ち上がって、挨拶すると、その紳士は
「あ、食事中にすみません。●●さんですね。まあ、お座りください。常務の鈴木(仮名)と申します」
とか言いながら、名刺を渡された。
常務!?
おいおい、こっちはたかだか大学生だぞ。常務が会いに来るのか? そして、常務は続けた。
「●●さん、内定しておりますので、お伝えします。弊社をどうぞよろしくおねがいいたします。」
と、言い残すと、去っていった。
は?
絶句するしか無かった。
残りの寿司ランチを食べようと思ったけど、思うように喉に通らなかった。人事課長が、言った。
「鈴木常務取締役人事部長がおっしゃるように、内定しておりますので、明日にでも履歴書を持参していただけますか?」
そうだ。そういえば、まだ履歴書も出していなかたのだ。こんなのがあり得るのだろうか???
そういえば、今日の午後に、もう一社にアポイントがあった。そこに持っていくはずの履歴書を渡してしまおうと思った。
「あの、履歴書、あります。」
その会社に履歴書を渡した。午後の会社は、行かなかった。
もう、就活を終わらせたかっただけ。受かった会社に行こうと思っていたから。なぜなら、初めから、適当にリストアップした就活だったし。他と比べても大差ない。
・1部上場
・一般人に有名ではない
・理科系企業の営業職
結果的に、このリストアップは成功して、就活に成功といえば成功した。就活は終わったのだ。見事1社目で内定。笑