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ある設計事務所代表の哀愁

Image by Olia Gozha

当時私は平田東九州病院の設計契約を目前にして死に物狂いで働いていた。
工事費にして15億~20億の巨大プロジェクトの設計依頼を独立したての個人事務所が単独で勝ち取ろうとしていたのでそれはまぁ尋常じゃないくらい必死だった。
そしてある日、基本設計打合をし大筋了解を得られた。
これでまず大丈夫だろう。と(お祝いも兼ねて?)その今晩は早く床についた。

約20分後、蚊に襲われた。
被害箇所多数。足の裏2箇所含む。

かゆい。とても寝ていられない。

家にはキンカンも蚊取線香もない。

眠れないのでコンビニへ歩いて買出しに。

しかしこの前までその手の商品が置いてあった棚は既に「風邪予防コーナー」に変身完了。

体中を「ぼりぼり」しながら手ぶらで帰路につく。



途中自販機でジュースを買う。
(当時設計依頼する条件として「煙草をやめること」を言い渡されていたのでお察し下さい)

「あ。」

コインが自販機の下へと転がる。

辺りは暗闇。小雨も散る。

手首から先を自販機の下へ入れる。


届かない。



手をもっと奥まで入れる。
「イテテテ、イテテ・・・」



やっぱり届かない。





イスラム教徒の礼拝ばりに額を地べたに擦り付けながら肘まで手を入れる。
「イテテテ、イテテテ、イテテ・・・アラーの神よ・・・・」

やっと届いた。でも10円だった。




擦り傷だらけの腕・膝を撫でながら帰路につく。

10秒おきに片足を上げて足の裏を「ぼりぼり」しながら帰路につく。




昼間は病院の理事長、院長他役職者数十人相手に一人で億単位のプレゼン。 でも夜中に10円玉を拾う為、擦り傷だらけになる男。










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