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最悪のフラッシュバックがやってきた

Image by Olia Gozha

小菅拘置所に移行してからはフラッシュバックが毎日襲ってきた。幻覚、幻聴は当たり前、重力が重くなる妄想にやられて、まともに歩けず車椅子のお世話になった。
 創造主と地球を一から作り直すゲームや独居内で動画配信など、独り言を繰り返すベタな妄想がヒドくなった。買ったバナナやパンに文字で電波が届き、頭がおかしくなった。車椅子で移動中、カーペットにまで文字が伝播し、四六時中、電波文字に囲まれていた。度重なる吐き癖により、歯は溶けてなくなった。
 看守も電波側の人間だという妄想に捉われ、入浴中やことあるごとに監視され、報告されている被害妄想に苛まれた。事実、監視はされていたのだが。体重は42キロまで減り、日常生活がまともに送れなくなった。
 独居で楽しみはラジオと読書。あったかいごはんを欲していたが、ココでは沸騰した味噌汁が出る。何曜日に何を(日用品・食べ物・官本など)注文するか決まっており、時間がかかる。
 気が触れていたので、毎日のように精神科を受診させられていた。けっこう本気で看守には心配されていたと思う。
 結婚相手からの奇襲、飛び出る手紙、音圧を変えられるラジオ、重力が変わる日、間から湧き出る妄想、神聖幾何学と神とのセッション、ありとあらゆるフラッシュバックが起きた。
 精神安定剤がまったく効かず、精神が衰弱していった。フラッシュバックをバク宙のように楽しめる日もあったが、そんな日はマレだ。現実と幻覚の狭間でブチ揺れていた。ぐったりですよ。
 時間の感覚がなくなり、量子力学を身体で実感する。生きているのか、死への憂慮は始まった。
 ある時、看守に体重計に乗せられ、「これが今のお前の現実なんだ。見ろ」と痩せ衰えた体重を知らされた。だが、目は覚めない。
 幻覚うつつの中で生き、指先一本動かせない。死体のような日々が過ぎた。
 裁判の日、あまり覚えていないが、ラッキーなことに、なぜか執行猶予が取れた。シャバに出れる感慨はなかった。終わった寂寥感を感じた。どこに行けばいいのかわからなかった。

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