1日目
朝11時に高田馬場の駅のトイレで待ち合わせて、アイス10万円分買った。いつも通り、トイレ前で受け取って、トイレの個室で中身を確認。3Gとポンプ6本。今日は入稿日。会社でキメるか…。
五反田駅で降りて、駅前のファミマに寄る。いつものコース。入るとき、お巡りとすれ違う。かすかに悪い予感がした。勘ぐりだ、気のせいだと言い聞かせる。
中に入り、飲み物とタバコを買い、外に出るとお巡り4.5人に囲まれていた。
「お前、何やってるんだ」
いや、買い物して出てきただけじゃん。この時点で僕は諦めていた。なんで今日なんだよ。
「お前、絶対何か喰ってんな」「腕まくってみろ」
お前呼ばわりにイラっときた僕はささやかな抵抗で右袖をまくった(僕は右ききなので注射は左腕)。腕の刺青を見て、お巡りちょっとどよめく。そして、ときめいているような反応を示した。
「応援願います」
職質に応援もクソもないだろう。続いて左の袖をめくると、ケアリープや絆創膏を見たお巡りは確信を掴んだのか、色めき立っていた。職質は数え切れないほど受けてきたが、「持ってる」状態で受けたのは初めてだった。
「ブツが出ました!」
また、うれしそうに言うんだ、コレが…。そりゃ出るよ。買ったばかりだもん。パトカーで大崎署へ連行。ああ、今日入稿日なのになとか、試用期間中なのに終わった〜とか考えていた。
けっこう大人しく取り調べを受ける。出てきた3Gのパケとともに写真を撮られ、手錠をかけられた。うわぁ、パクられた…と思った。精神病院のときみたく、また自由が奪われるのが一番イヤだった。あと、会社クビになるのも…。
取り調べon取り調べ。国選弁護士を付けることにして、とりあえず当番弁護士に連絡。徹底的に持ち物検査されたが、なぜかチューブ(腕を縛って血管を見えやすくする)は没収されなかったが、隔離病棟と違い、携帯を見て、「誰々に連絡して」ができないのが痛い。今どき、電話番号なんて、自分の以外、誰のも記憶してねえよ。
逮捕されて、6.7時間経った後、ひとしきり語り終わって、シャバっ気も抜けたころ、弁護士到着。今さら、何すんの?
その弁護士さんの話では、弁護人は僕の携帯見れると言うので、会社、親、恋人、友人に伝えてほしい旨を伝える。出るまで20日以上かかるらしい…マジかよ。長いんスけど。
初犯だから実刑はないだろうとはいえ、キツい。石丸元章『アフタースピード』で読んだ情状酌量人を誰にしようか考えて、受けてくれれば会社の上司と恋人にした。大丈夫か。
取り調べ中、いちいち、トイレ行くのに留置所のトイレ行くのが(取り調べ室の隣にトイレあるが、手錠付け直して、一階下の留置所のトイレへ移動)お役所感あるなと感じた。
夕方、正直に病気のことを話たら、外の病院に「診療」に連れて行かれた。車内でお巡りに、「警察24時ってどうやって撮るんですか?」とか、「外国人犯罪、増えましたよね」的なお巡りに擦り寄る精一杯、興味ありますよ(と僕は思った)的な質問をぶつけ、ヒマを潰す。けっこう話題は盛り上がった。
「●●(同乗してる刑事の名前)、お前もこの人を見習え!」
「次から次に話が発展する。頭の回転が早い」
そう、上司の刑事さんは絶賛してくれたが、犯罪者の何を見習うというのか…職業柄か生活環境からか、人転がしには定評があります(捕まってる段階で意味ないけど)。
病院ではダメもとで言ってみた、強めの薬がけっこう通った。デパスとか廃盤だと思うが、あるとこにはあるのね。ハルシオン、サインバルタが出ただけでも、かなりありがたい。ちなみに運転手が道に迷いまくった。
弁護士と別れて、取り調べ室に戻る。タメだと言う組対(組織犯罪対策部、主に暴力団などの組織犯罪、銃器や違法薬物の取り締まり、外国人犯罪を担当)の刑事さんはいい人だった。シャブに至った経緯については同情的に捉えられていた(と思う)。
途中で気になって、「弁護士って携帯見れるんスか?」と聞いたら、
「いや、見れないよ。押収されているから」
「ナヌーっ。ちょっと弁護士呼んで」
ツラい。幸い、まだ署内にいたらしく、すぐきてくれたようだが、「この弁護士、使えるのか?」と大丈夫なのか不安になってきた。じゃあ、この人はこのSNSから、この人はTwitterからなど、連絡先を辿る手段を弁護士に伝え、別れた。あまり、弁護士を信用してはいなかった。
夜12時を過ぎても取り調べは続き、やっと留置所に着いたとき、時刻はテッペンをとうに超えていた。留置所内に入るとき、また取り調べや持ち物検査を繰り返す…ちょっとイラつき始めていた僕は「何回同じこと聞くんだよ」「情報共有しとけよ」とか言ってたけど、犯罪者のくせに態度デカいな、射殺されんぞ。まあ、何回も同じこと聞かれるの大嫌いだし、ちょっと反省。6月なのに、クソ寒いシャワー室でシャワーを浴びる。眠剤飲んで寝る(このノート手に入れたの5日目だから、ちょっと記憶前後してるかもしれない)。