アート界は混迷の時代を迎えています。ZOZOの創業者でアートコレクターとして有名な前澤友作さんは、アートを投資目的だけではなく、「現代芸術振興財団」を設立し、現代アートを盛り上げようとしています。そうした投資目的だけではない、アートの発展に寄与しようとしている人はまだ少ないのげ現状です。しかしそれは、前澤さんだけでなく、投資家の中にはこうした活動を続けている方もいます。今回は自分のアートへの価値観を変えてくれたある人物が立ち上げた財団について書いていこうと思います。
現代アートの根幹であるアーティストを支える財団
私には自分をアートの世界へ引き込んでくれた人がいます。その方とは投資家の知人を通じて出会いました。それが一般財団法人「村主現代芸術文化財団」で理事長を務める村主悠真さんです。この出会いは私を現代アートへ興味を深めるターニングポイントとなったわけです。
村主さんは投資家という側面を持ちながらも、唯一無二な作品を集める現代アートコレクターとしても、業界で名を馳せている人物です。しかも、一般財団法人「村主現代芸術文化財団」を運営し、現代芸術の振興を図るため、若手芸術家に対する助成支援を行うなど現代芸術界を盛り上げようとしています。
村主さんが行う、今後の現代アートを担っていく若手芸術家への助成支援はいわゆる奨学金のようなもの。もう少し活動するお金があれば陽の目がみられるという若手アーティストに対して、奨学金を給付する支援活動です。そして、その奨学金はなんと返済義務がありません。現在、その支援を受けた第一期生たちが実際に助成金を使って活動し、有名アーティストへの階段を上っている最中とのこと。
村主さんは独自のスタンスから、現代アートへ貢献したいと実際に活動している人物です。
村主さんは投資家なので、アートを投資として見ているのかと思われがちですが、そうではなく、純粋に自分の感性を刺激し、心に響くものとしてアートが好きとのこと。「投資目的としてアートに投資してもそんなに儲からない」とハッキリおっしゃられておりました。
これまで理系脳で育ってきた村主さんは、この世のすべてを数式で表せるものと考えてきたそうです。ただ、アートや音楽は、数式で表すことができず、自分が把握できない“何か”が面白いということで興味を持ったのがきっかけだったそうだ。
芸術や文化を形成していく“人”に支援する寄付活動
村主さんは「村主現代芸術文化財団」の他にも「日本寄付財団」を立ち上げました。この「日本寄付財団」は若手芸術家だけではなく、すべての層、例えば貧困層だったり、母子家庭・父子家庭で生活が立ち行かない人だったり、障碍者や高齢者などに寄付をしていくという財団です。村主さんは、水面下でずっと寄付活動をしていましたが、ちゃんとした“財団”という形で正式に続けていきたいという志から、この財団を立ち上げるに至りました。
例えばどこかの団体に寄付するとします。それだけでは、その寄付したお金が具体的にどういったことに使われているか不透明な部分が、少なからずあると考える人も多いでしょう。今回、財団を立ち上げた理由として、それを可視化したいという意図もあるようです。だからこそ村主さんは、財団に集まった寄付を還元するため、すべての収支を公表し、間接経費もなるべく“0”にして、最低限のことを全力で行い最大化できるように尽力しようと考えているそうです。そうすることで、みんなが疑念に思うことを払拭したり、寄付に対するハードルが上がることを極力なくしていきたいそうです。
「日本寄付財団」としての活動は、大部分の寄付を国内(貧困層への支援、高齢者の介護支援、伝統文化への支援、スポーツ選手への支援など)に注力する予定ですが、そのうち3割を海外の途上国(アフリカ、東南アジア、南米)への寄付(支援)として考えているとのこと。
村主さんは芸術や文化は社会の根幹をなすものだと考えていました。そのまえに社会の根幹をなすのは“人間”なのです。その“人間”が豊かでなくても普通の生活をしていないと、芸術はもちろん、文化も生まれません。昨今では、貧富の差が開きすぎて、実は若い世代を中心に貧困層が増えているというニュースも見られます。村主さんはそういった危機感を持ったことで、以前から寄付活動を続けていたそう。
この世の中には村主さんのような志のある人のおかげで、生活できている人もたくさん存在します。そう考えると自分も寄付活動に興味が湧いてきました。寄付活動をすることが、すなわち現代アートを盛り上げると考えると、寄付へのハードルもかなり下がるような気がします。村主さんを通じて、寄付活動をする大事さが分かったような気がしました。