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毎週1人ずつ消息不明になる職場

Image by Olia Gozha

豊田がとびました。

飛ぶ・・・突然ある人が会社に来なくなってそのまま辞めてしまうこと

2020年秋、この1ヶ月で4羽目。

毎週1人ずつ、音信不通になっていく。

日々の業務に忙殺され、その事について深く考えることはなかった。


しかし今日、突然だ、

豊田が戻ってきた。

朝出社すると​、飛んだはずの同僚が座っていた。

「すみません、ご迷惑をおかけしました。」

数週間、音信不通だった彼女は、何事も無かったかのように座っていた。

僕だったら気まずくて再び会社に戻ることはないだろう。

その精神力に感心したし、何より元気そうで安心した。


「なんだか今日は良い日だな〜」

久しぶりの再会が嬉しくて、僕は柄にもなく口にした。

豊田は、照れ臭そうに笑った。

笑っていたのにだ。

「お世話になりました」

豊田は自分の机を空にし、同僚に別れの挨拶を済ませていた。

すぐさま、会社を去っていく彼女を追う。

苦悩の末に出した答えだ。とやかく言うつもりはない。

ただひとつだけ、どうしても確認したい事があった。

狩野さんに挨拶したの?

狩野は業務上、豊田のバディだった。

突然相方が消え、全てを背負った、苦しみは計り知れない。

「怖くて、怖くて、とても挨拶できません、、」

「ここで帰ったら、一生後悔するよ」

僕は引きずるようにして、狩野のところへ連れて行った。


「狩野さん、本当に、本当に申し訳ございませんでした。」

少し離れた所で見守っていると

「おお!元気そうでよかった!」

「そうか辞めるんだね。新しい仕事決まったら連絡してね!」

豊田は緊張が解けたのか、狩野の優しさに泣いていた。


僕は心の中でガッツポーズ。

半ば強引に連れて来たが、間違ってなかった。

廊下で微笑む僕の前に、先輩がやってきた。

そして言った


物好きだね、時間の無駄でしょ


衝撃だった。

心無い言葉はもちろん。それ以上に、


激務に耐えられず、先日まで同じように飛んでいた、

豊田の気持ちに最も共感できるはずの人物だったから


僕が入社したのは激務と言えばの、マスコミ業界。

その辛さに耐えきれず人の入れ替わりも激しい。


時間の無駄・・・

入れ替わりが激しいゆえに「辞めていく1人にいちいち構うな」

という事なのか


それとも

「仕事が出来ない、新人のお前に、そんな時間の余裕ないから」

という事なのか


毎週1人ずつ音信不通になる

上司は休みなよと口にするだけで何もしない


右も左も分からない新人の僕。

それでも一つだけ分かる。

この職場、異常だ。





















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