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有り難う。そして、さようなら。

Image by Olia Gozha

その日は半月の夜でうっすらと雲がかかっていた。僕は心の中で『またお話ししたいな。また一緒に釣りに行きたかったな。』などと思いながらぼんやりと夜空を眺めていた。

梅雨が明けていないのにもかかわらず次の日は晴れ、夏の雲が流れていた。少し外にいるだけでも暑く汗が出た。でも、収骨の時はなぜか暑さを忘れていた。

その夜、おじいちゃんの家で親族と食事をした。他愛のない会話でもすごく楽しかった。僕はおじいちゃんが飲みたいと言っていたサイダーを届けに行った。きっと、美味しかったはずだ。そして、みんなとの食事が終わり、団欒も終わり、家に帰る時、僕はおじいちゃんに「おやすみ。ばいばい。」とお別れの挨拶をしに行った。この時の僕の本当の気持ちはサイダーを届けにいくのも別れの挨拶を言うのもこんなことしたくも言いたくもなかった。

それから家に帰る時、ふと夜空を見上げた。

そこには星が輝いており、僕の心を照らしてくれていたような気がした。すると、父が「また一緒に釣り行きたかったのー。今日は明るい半月や。夜釣り日和じゃの。」と言った。僕は『きっと今頃、おじいちゃんは久しぶりの釣りを楽しんでいるよ。』と心の中で思っていた。

それから家に着き風呂場に向かった時、僕は自然と泣き出していた。あまりの現実に吐き出しそうになった。親には未だに泣いている姿は見せたくはなかったので気持ちを整え、風呂を出た。もう寝ようとおじいちゃんとのツーショット写真を持って自分の部屋へと向かった。椅子に座り、エアコンをつけ、写真を眺める。

灯り一つの薄暗い部屋で冷たい風に吹かれ、


僕はまだ、泣けたんだ。


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