アベンの後方から歩いて行くと倫子の顔が見えた。
倫子は私に気が付いた途端、目を合わさないように下を向いた。
バツが悪そう・・・。
そりゃぁ~~、そうだろ!
私の顔を直視出来るはずが無い。
一体どんな図太い根性をしているのか知らないけど、私は何度も
「旦那に言うよ!!」と、警告をしている。
それにも懲りず、ラゴンとグルになって私を騙そうと、
2人で偽装工作までして不倫を続行し続けた。
私から言わせれば、凶悪犯だ。
こうなったのは自業自得だ。
倫子もアベンだけなら、口で言い任して誤魔化せると思っていたかもしれないけど、
私が居ては観念するしかない。
そう、ラゴンがアベンを恐れるように、
倫子にとっても、私は一番恐れている相手だから。
アベンは、バカ嫁に(言い過ぎ?)怒鳴っていた。
ア 「一体、どういうつもりや! ええ加減にせぇよ。
自分が何をしたか分かっとるんか!」
「毎週毎週、家の掃除もせんと遊び歩きやがって!」
「こんな事して恥ずかしくないんか!
ええ年して良くこんな事ができるな!」
倫子は黙って下を向いている。
表情さえも分からない。
暫く、アベンが倫子に説教をしていたが、ラゴンはまだ帰ってこない。
遅い・・・。
ラゴンはお茶を飲みに行くと言ったが、恐怖で出てくる勇気が無かったんだと思う。
今頃、事の重大さが分かって怖気づいていたに違いない。
私は倫子に 「貴方の相棒は逃げたかもよ!」 と言った。
その時、倫子は 「え?」 と言う表情で、思わず顔をあげかけた。
私は 「どんな奴かも知らずに、よく付き合ってるわ!」 と、

オドオドしながら、手を前で組んで・・伏せ目がち、
勿論こちらを直視出来ない。
これが、仮にも私の夫だなんて・・・。
情けない・・・。
情けなさすぎる。
女、子供に本気で切れまくるくせに・・・。
大声で怒ったり、机を蹴ったり威嚇しまくるくせに・・・・。
大人の男として、最低の姿だった。
この時の私は他人を見る目でラゴンを見ていた。
何の情も無い、あるのはリベンジだけ!
むしろ他人以下だ。
敵でしかない!
さー、メンバーが揃った。
ここから、ダブル不倫と言う犯罪を犯した2人への制裁が始まる。
アベンが2人に対して怒りをぶつけている間、私は黙って横に立って聞いていた。
私が何かを言うまでもなく、アベンが全て言ってくれていた。
アベンの倫子に対する怒りは普段の生活の話になった。
「掃除もしない、家は服を脱ぎ捨てて歩く所も無い・・・。
休みの日は、ご飯も作らない。
いつも家にいなくて遊びまわって、
飼い犬も散歩にも行かず欲求不満で病気になっとる」
話しを聞いていると、最低の母、最低の嫁、最低の飼い主・・・。
そして、倫子にとっては愛するラゴンの前で、
自分の正体をバラされるのが、一番の恥だったんだろう、
この場に及んでまだ誤魔化そうとしていた。
リ 「そんな事ないやん~・・・掃除もしとるやんか・・・」
このバカ嫁の態度で、
冷静に聞いていた私の怒りに火がついた。
何だ、この生き物は~!
自分の恥を皆の前でバラされて、まだ体裁を気にして嘘を付く気?!
この2人から出てくる言葉なんて、謝罪以外何も出ないはず。
全然反省してないじゃん!
私の頭の中で、ブチッブチッと何かが切れる音が響いた。
この瞬間、人が良くてスマイルの表情筋しか使った事が無いカレンに
チョーーー毒舌の何かが乗り移った。(毒舌妖怪?)
バカ不倫女と、
バカラゴンの29年間の恨みが蘇ってきた。