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生きると決めた日、それを忘れた日々、思い出した今日。④

Image by Olia Gozha

④過去(3年半前) 出会いまで


全てに絶望した。

なぜこのタイミングだった?

積み重ねた努力、悩んだ時間、乗り越えて進もうとしたエネルギー、その全てが否定された感覚しかなかった。


俺は死にたくなった。

二十歳になりたての俺は遺産の話に巻き込まれ、父の思いとはきっと違う形での解決に向かっていくのを心臓が痛いのを感じながら眺めた。


何度も死にたくなった。

死に切れなかった俺は、生きる理由を別のところに求め始めた。


学童の先生になった。

子供が好きだから、年の離れた兄弟がいて面倒見の良さには自信があるから、

いくらでも言えたさ。


本心は、

「子供はすぐに死なないから」

こんなクソみたいな理由で指導員やっていたなんて、今思えばふざけてる。


それでも子供たちのことを真剣に見つめ続けたし、その想いが伝わる場面は何度もあり、素晴らしい時間を過ごした。

本当に素敵な時間を過ごした。

それでも、染み付いた考えや、重い後悔は俺を掴んで離さない。

2つの極の間を行ったり来たりする日々だった


そんなある日、子供の前で歌を歌ったら、普段素直じゃない子供が

「よしきうたうまいね」

なんて言ってくれた。


あぁ、音楽は死んでいなかった。


そう気づいた俺は子供たちのために始めたばかりのギターを持ち込み、弾き語り、密かにギターの習い事も始めた。

あまりにも高かったのでスクールを変えたところ、ボイストレーニングも受けられる校舎だというのでそれを受けてみようと軽い気持ちでレッスンを受けた。


それが人生を変える出会いに繋がると俺は思っていなかったよ。


素晴らしいコーチがいた。

そのコーチに、何か自分に近しいものを感じていた俺は、何度も彼だけを指名するようになり、ギターは習わなくなった。

ある日、彼は俺を馬鹿だと思っていたと言う。

俺は悔しくて成績が良かった頃の話をする。

なら何故大学にいかなかったのかと聞かれ、そのままの理由を答えた。

不登校、人間不信の過去、気づけばそのあとの引きこもりと親父の一件まで全て語ってしまっていた。レッスンの終了時間は当然過ぎていた。涙目溢れて止まらなかった。


一通り聞き終えたあと、彼はいう。


「僕は君が羨ましい。

僕はもう涙の流し方もわからないんだよね」


重みが、違った。

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