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何の役にも立たない話

Image by Olia Gozha

家に帰れない。。


今日もデモに備えて店の近くを一人パトロール。

今日はかなり警官も厳しくしていたので、

お店は大丈夫そうだ、

と一安心して家に帰ろうとしたその時、

ウーバーやタクシーが動いてないことに気づく。


そうだ、夜の8時超えたら外出禁止令が出ていて、

タクシーもなくなるんだった。

気づいた時は8時半を超えていた。

外出禁止令だが、

飲食を含むエッセンシャルワーカーは

外出を認められている。


今日も呑気に橋を走ってきた僕は

いつも通り財布も何も持ってきてなかった。

電車の切符も買えないし、

仕方なく歩いて帰るか

といつものブルックリンブリッジへ向かう。


橋まで向かってる途中にいつもと違う光景に気づく。

外出禁止令が出てるので街に本当に人がいない。車も少ない。

といっても一般人はいないが警官は何十人、何百人といて橋近くの

道を全部封鎖している。パトカーも何十台と並んでいる。

何も悪いことをしてないはずだが、

こうも一人でたくさんの警察に囲まれると、

なぜか後ろめたい気持ちになるから不思議だな、

と考えながらも警察の本陣に飛び込んでいく。


この橋を渡らないと帰れないんだから

こっちも迷いはない。絶対に負けられない。

橋を封鎖している二人組の

怖そうな警察官に話かける。

「通っていいですか?」

すると

「ダメだ、今は外出禁止令が出てんだぞ」

僕も負けじと

「いや橋渡って家に帰るんです、そこで働いてたので」

「そうかじゃぁサイドウォーク渡っていいぞ」

「ありがとうございます、でも見た感じサイドウォーク閉まってますけど」

「あっそうだった、閉まってるわ。他の橋をあたってくれ」

なんじゃそりゃ、とツッみたい気持ちを抑え、

今日も大変だけど頑張ってね、と明るく別れを告げる。


そして言われた通り隣のマンハッタンブリッジへと向かった。

今度も橋を封鎖している警察官に話かける。

「家帰りたいので渡っていいですか」

「いや閉まってるから無理だよ」

僕だってここで引く訳にはいかない。

家に帰らないといけないんだ。

「じゃぁ僕はどうやって家へ帰ればいいですか」

「ウーバー使いなよ」

「いやウーバー動いてないです」

「じゃぁ電車使いなよ」

「いや財布もってきてないです」

「。。。」

「。。。」


そんなことを繰り返しながら、

ついに僕も諦めて財布も持たずに駅へ向かうことに。

時に爽やかなほどの諦めがその後の命運を握る。


駅へ向かいながら改めて異変に気づいた。本当に誰もいない。

誰もいないブルックリンの街並みは閑散としているだけでなく

どの店もデモの暴徒を抑えて、木材で窓を封鎖していた。

駅前のお店は全ての店が封鎖していてまるで戦争でも

始まるんじゃないかという雰囲気が出ていた。


コロナで確かにロックダウンされていた。

でも今回の外出禁止令はその比ではない。

橋は封鎖され、タクシーは動かず、

買い出しや運動の外出も禁止となっているからだ。


そんな雰囲気の中、

僕は走って橋を渡りそのまま財布も持たず呑気にお店まできたので

アンダーアーマーの上下にランニングシューズというふざけた格好で

一人駅までのうのうと歩いて行った。



そして運命の瞬間がやってきた。



神様ありがとうございます。

なんと辿り着いたその駅はたまたま

最新のスマホでお金が払えるシステムが導入されていた。

そして無事スマホで運賃を払い、

家まで無事帰れたとさ、

めでたしめでたし。


と何も役に立たないお話でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございます、


明日はきっと役に立つ。

早く平和になってくれ!

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