・自己紹介
初めまして、白水(しらみず)一郎と申します。私は全国の医学部受験生を指導する仕事をしています。今回、お金がない子が医学部・医師に進めない「教育格差」の拡大を食い止めたいと願い、この文章を書いています。
・出版に至った経緯
医学部は受験界において、もともと人気の高い学部でした。最近はその傾向がさらに強まっています。問題なのは、お金をかけて高度な受験ノウハウを得られる家庭の子弟でなければ、合格が厳しい状況になっている点です。
現に、医師の子弟の多くは中学受験を経て、医学部に多数合格者を出す中高一貫校に行き、さらに予備校や塾に通い、国公立・私立を問わず、医学部受験をするのが一般的になっています。すなわち、「お金」がないと医学部に入れず、医師にはなれないのです。
私は2005年10月から医学部受験生向けにブログから無料で情報提供を開始しました。医師の家系ではなく、医学部合格実績のない高校の生徒を集め、無料で受験を指導し、現役で金沢大学医学部に受かった生徒もいます。
そのうち、地方の公立高校から予備校や塾に通わず、地元の国公立大学や、自治医科大学、防衛医科大学校に合格したとの知らせが届き始め、彼らの協力を得て、2011年11月『医学部受験に強くなるマル秘テクニック』(エール出版社)を出版しました。
・宅浪から難関国立医学部に合格し、奨学金で学費を支払った生徒について
前振りはこのくらいにし、ここからが「今回の本題」です。
ずばり、お金がなくても、難関国立大学医学部に合格し、医学部入学後も、奨学金やバイトで賄い、医師になった生徒(Kさん)の話です。
今では、医師をしています。
彼が合格後、いろいろ話を聞き、7回に渡り、メールマガジンで体験記を紹介したことがあります。こちらをアレンジし、以下にまとめていきます。
・最初の出会い(リアル)
さて、5月12日(日曜日)、千葉大学医学部1年のKさんと千葉大学の西千葉キャンパスにて、お会いしてきました。
Kさんは高校卒業後、1年の自宅浪人を経て、今年、防衛医大正規合格、千葉大学前期合格され、後者の大学に進学されています。
現役時も両校を受験され、どちらも落ちています。
ということはもうおわかりですよね?
努力を積み重ね、成績を上げ、念願の希望する医学部に合格したということです。
しかも、千葉大学は東京に近く、駿台予備校の合格者数が半端ありません。ざっとですが今年40名前後は占めています。
ここに、河合塾、代ゼミなど加えていけば、それ以外の人間が何人いるかってことです。(鉄緑会なども昨年ですが、26名千葉医に合格しています)
※千葉大医学部の定員は117名です(2013年)。
自宅浪人がマイノリティーであることには、間違いありません。
(というより、Kさんが知る限り、同学年では他に見当たらないようです)
彼が大学に入学した年の5月12日(日曜日)、千葉大西千葉キャンパスで初めてお会いし、一緒に正門前で写真を撮ったものを、当日、私のフェイスブックでも紹介済みです。
興味のある方は、そちらもご覧ください。
https://www.facebook.com/ichiro.shiramizu
・最初の出会い(バーチャル)
Kさんが私のことを知ったのは高2の秋のこと。
ネットでいろいろと探していたら、たまたまブログを見つけたそうです。
そして、不安解消講座(私のメールマガジン)に登録。そのとき、こんなメッセージを残してくださりました。
2010年11月21日
Kさん)
塾に行っていないので、具体的な勉強法がイマイチつかめない。
これに対して、私は次の返信をしています。
白水)
こんにちは!sophia97こと白水(しらみず)です。先日、不安解消講座にお申込みいただき、ありがとうございました。
Kさんが残してくださったコメントに関しては、今日のブログ記事(※)をご覧になってください。
それをお読みになり、またなにかありましたら、メールをお待ちしています。
これまでも、多くの先輩方が、塾や予備校に行かずに、志望する国公立大学に合格されてきました。
ぜひ、Kさんも頑張ってくださいね!
※2010年11月29日の記事を指しています。
http://sophia97.livedoor.biz/archives/51652764.html
(ここまで)
長くなるので、また次回に続きます。
次は、Kさんから届いた2回目のメールから始まります。
今日はKさんのお話2回目です。
前回は、高2の秋、不安解消講座に登録し、その際、残してくださったメッセージをご紹介しました。
今日はKさんから2回目のメールが届いたところから始まります。
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目次
1.Kさんからもらった2回目のメール
2.返信
3.その後のメールのやり取り
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1.Kさんからもらった2回目のメール
次にメールをもらったのは、現役のとき、千葉大医学部前期の面接を終わった後でした。メールの内容はこうです。
2012年2月26日
Kさん)
夜分遅くにすみません。本日、千葉大学医学部を受けてきた現役生です。
以前一回だけ質問したことのあるKと申します。
今日は面接試験で、自分を含め6人ぐらいの人(自分は午前中の部だったので午後でもあったとは思いますが)が、再面接を当日中に受けました。
全員が受ける面接は知っていると思われます。一対一の面接を三回やるのですが、再面接では5人の面接官対自分で何故後期を受けなかったのか、とか地元は千葉なのになぜ千葉大を受けたのか、落ちたらどうするのか、とか少々きつめな事を言われたりしました(圧迫面接?)が、なんとかこらえて必死に主張して終えました。
ここで気になるのはなぜ自分が再面接になったのか、それと再面接と合否はどのように関係あるのか、という事です。
筆記試験は自分にとっては難しく合格圏内に入っているかは微妙です。でも再面接があったからには、何らかのチャンスがあるのではないかと思いました。
長くなりましたがすぐに疑問を知りたいです。お忙しいとは思いますが、回答をよろしくお願いします。
(ここまで)
メールがあったのは、22時半を過ぎていました。しかし、すぐに返信をしています。
2.返信
白水)
こんばんは、白水です。
メールをありがとうございました。
早速、お答えします。
以前、駿台の全国国公立大学医学部医学科説明会で、千葉大医学部の教授による話で聞いたことをお話します。
再面接になったのは、断言はできませんが、おそらく、最初にやった面接で評価が低かったため、念のため、もう一度見てみましょう、というレスキューとしての面接だったと思います。
ただ、緊張してたり、不当な評価だといけないので、もう一度やるという意味が込められており、実際、面接で落とされるのは、ほとんどいないと聞いています。
ですから、あまり気にせず、後期があるのでしたら、気持ちを切り替え、次の目標に集中することをお勧めします。
本当に面接で落ちるのは、医師に明らかに不適格だと思われる人だけだと聞いています。
3.その後のメールのやり取り
Kさん)
ありがとうございました。
面接は自信があって医師になりたい熱い思いとか自分の意見をはっきり言ったので評価が低いと思われていて残念です。
どこに悪い所があったか正直わかりません…。
白水)
面接の評価は、どうしても相対的なものになりがちです。
これは、医師になっても同じこと。
患者さんのためにやってはいても、皆さん、同じように感謝してくれるとは限りません。
これは、医師になった後も、ずっと付き合っていく必要のある問題です。
入試の面接に関しては、特に気にする必要はありません。
大前提として、客観的に見ることのできる筆記が最も合否に関係してきます。
簡単ですが、以上です。それでは、健闘を祈っています。
Kさん)
そうですね。
再面接の次の人は自分と同じ面接官に当たった人でした。
筆記は微妙で後期も出願していないので、浪人覚悟ですが、それでも負けずにがんばっていきます。
自分の駄文に付き合い頂き、本当にありがとうございました。
白水)
ファイト!!!
Kさん)
また何かあったらよろしくお願いします。塾行ってない身なので。
白水)
いつでも、お待ちしています!
(ここまで)
メールは夜中の0時まで続いたのでした。
今日はKさんのお話3回目です。
前回は高校3年時、千葉大二次試験前期日程が終わった直後にくれたメールをご紹介しました。
その続きからとなります。
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目次
1.高校3年時の受験結果(3月末)
2.返信
3.中学時代~高校時代を振り返って
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1.高校3年時の受験結果(3月末)
しばらくして気になったため、メールしました。
2012年3月20日
白水)
こんばんは、白水です。
前回メールをいただいてから、あっという間に入試シーズンも終わってしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか?
少し心配だったため、メールしました。
また、なにかありましたら、メールをお待ちしています。
それでは、失礼いたします。
Kさん)
こんばんは。まさか白水さんから、直々にメールが来るとは思いませんでした。感激です。
千葉大落ちました。センターは88%だったのですが、二次でつまずいてしまいました。
後期はリサーチを見て出願しませんでした。やはり自分より点数高い人が、千葉大の後期で足切りをくらったそうです。
また一からやり直しです。
家庭の経済状態も良くなく、受験費用は出してもらえないという事で3月中は平日は一日中働いて月15万稼ぐ予定で、それを受験料やら模試代やらをやり繰りしていきます。
今年も防衛医大は受けます。昨年落ちたのでリベンジを果たします。
勿論私立は家庭的に受けられませんし(自治医科は考え中ですが)、祖母が千葉大で救われたのでやはり千葉大をまた受け直します。
親には一浪までと言われているので、もしかしたら中期で名古屋市立の薬学部を受けるかもしれません。
後期はまだ迷っています。センター次第で医学部にチャレンジか、他学部の滑り止めを受けるかです。
医師になりたいという気持ちは大きいので、もし悪い結果(他学部に入る事)になっても、将来お金貯めて再受験を考えます。
どちらにしろ来年は必ずどこかに入ってなければなりません。
学力については昨年度最後の模試(駿ベネ記述)が偏差値69です。
昨年12月前に肺炎にかかり、二週間何も出来ないまま学校の学期末テストを迎え、すぐにセンターの準備に取りかかったので、二次の知識がセンター終わった後に完全に抜けててパニクってしまい、モチベーションが下がってしまいました。
これが失敗の理由の一つです。健康には本当に気をつけていたので本当に悔しいです。
本番では英語の長文が難しいと歯がたたず、数学では方針が立ったのが遅すぎた事、毎年難しい物理の力学でも歯がたたなかったのが敗因だと分析してます。
上記の克服の為英語の解釈を基礎からしっかり、また物理の難問にも現役の時以上に当たっていきます。
数学は一対一の演習とスタンダード演習を完璧にします。
これからはやる事をしっかりやれば受かるとは思いますが、宅浪なのでモチベーションの維持が不安です。
また現役時に不安ですぐに新しい問題集に飛び付いてたりしたので、今年は五回は復習してから次に移るようにします。
長くなりましたが現在こんな感じです。
何か気になった事はありますか?
2.返信
白水)
こんばんは、白水です。メールをありがとうございました。
私からのアドバイスは3つです。
まず、『医学部受験に強くなるマル秘テクニック』白水一郎・著(エール出版社)をご覧になり、この1年の流れをイメージしましょう。
思うよりも、あっという間に1年は経ちます。この本では、宅浪で自治医大に合格された方など出てきて、お役に立つと思います。
ふたつめは、物理について。
上記本にもあるかと思いますが、難問はそれほど意識する必要はありません。本当に難問が必要なのは、東大、京大、阪大、慶應くらいです。
この方向性を誤ると、ムダに時間ばかりが過ぎ去ります。
最後は、千葉大について。
本でも紹介しましたが、秋に行なわれる学園祭に行かれるといいでしょう。在校生に相談できる機会があります。
ここで、実際に受かった方の話を聞くことは、直前期の過ごし方のヒントとなります。
簡単ですが、以上です。
上記本では、Kさんの高校の先輩も登場します。よろしければ、参考にしてください。また、なにかありましたら、メールをお待ちしています。
ファイト!
(ここまで)
ここまでが現役時、私との絡みの部分です。
この前(5月12日)、お会いしたとき、模試の成績等を見せてもらい、わかったことを次にシェアします。
3.中学時代~高校時代を振り返って
これは最近、中高一貫の中学生のお子さんを持つ保護者の方よりご相談が多かったことを鑑み、彼にも聞いてみました。
Kさん
「う~ん、部活ばっかりですね」
ただ、Kさんの高1の全統高1模試の偏差値は70以上あり、学年順位も12~13番くらいでしたので、学校の順位はキープしていた上での部活だったことを補足しておきます。
Kさんの出身高校から今年、国公立大学医学部合格者は24人。うち、現役合格者は10人です。
(『週刊朝日』4月26日号より)
今年、東大には現役5、浪人5、京大に2人受かっています。
(高校ホームページより)
高2の全統高2模試も同じく偏差値70以上。ここまでは順調です。
仮に高1や高2のとき、私に相談が寄せられていたら、こう答えていたと思います。
まず、学年順位をもう少し上げてもらいます。理想的には、学年7番くらいまでに入りたいところ。
次に、全統記述までは偏差値70を超えているため、次はやる内容に負荷をかけ、難関レベルの模試に挑戦の場を速やかに移し、そこでも偏差値70以上を高2の段階で達成します。
加えて、夏休みなど長期休暇を利用し、現代文などもやり、様子を見たことでしょう。
なお、Kさんが医学部受験を決めたのが高2の秋。ここから、医学部を真剣に目指しています。
(で、私のブログを見つけ、不安解消講座を購読)
高3の模試では伸び悩んでいました。具体的な数字は忘れましたが、高3のときに受けた模試の平均値は65前後で、あまり伸びてはいません。
当時、なにをしていたのかと聞くと、千葉大二次の難易度以上の問題集に手を出していたと言っていました。
Kさんが模試を見せて、「自分はどうですか?」と聞いていましたが、高3の4月にアドバイスをしていたら、適切な問題集を指示し、模試で経過を見るため、秋に受けた模試の数字以上が出たのではないかと話しました。
高校生はこの辺、注意が必要です。
1浪された医学部生に浪人した理由を聞きにくいのですが、『マル秘テクニック』でもズバッと質問しています。
(同書、165~166頁参照のこと)
ご自分と照らし、同じ轍を踏まないように、ご注意ください。
先輩からのありがたい助言です。