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飛び出せマヨネーズ。

Image by Olia Gozha

7年ほど前、大阪の夜の繁華街にてシャッターが降りた後

毎日ストリートマジックをして生計を立てている時期があった。

道ゆく人にショーを見せてチップをいただくためには

まずその人たちに足を止めてもらう必要があった。

様々なものを空っぽの手から出現させるマジックで

いろんなもので試しながらやり続けていた。


そんな中、100円均一のお店で ある運命的な商品と出会った。

「飛び出す調味料 -ケチャップ&マヨネーズ」

である。

この道具を早速活用してみたところ、足を止める人が激増した。

また、止まってくれなくても、それを見た人が笑ってくれて、心が綻んだ。

すごい道具に出会えたと思った。毎日鞄にしのばせ、どの場所でもその道具が真っ黒になり、使えなくなるまで使った。

買い替えは定期的に行っていた。使い続けて数年が経った頃、ここしばらくお店にその商品が置いてないことに気づく。

地方で見つけた時は大量に購入していた。まず間違いなく、日本で一番この調味料を購入した男だと思う。

そんな中、奇跡的な出会いがある。2年ほど前、偶然にもとあるバーベキュー場にて、許可を得てテーブルマジックをしていたところ、盛り上がっているグループにマジックをみせると、いつもと違う反応があった。

いつもショーのとっかかりでおこなう マヨネーズの出現。そこで大きなリアクションとともに まさかの言葉が放たれた、

「それ、うちの商品だよ。」

なんと、この飛び出す調味料 を開発した会社のグループだった。

創業100年を超える会社で、聞いたところ、その商品は数ヶ月前に廃盤となってしまったとのことだった。

社長もその時ご一緒におられ、感動が冷めやらぬ僕は、最大限の感謝を告げた。この道具のおかげで芸人として生きてこれたこと、この道具にずっとずっと助けられたこと。大きな念願が叶った気分だった。

パイプを加えながら 社長は、嬉しそうに微笑んだ。

「よかったら、余っている在庫があるから 君にあげるよ」

なんと無償で 200個もの 調味料を 送ってくださったのだ。1Kの部屋はあっという間にマヨネーズとケチャップで埋め尽くされた。心の底から嬉しかった。

その後、会社の集まりでショーとしても呼んでくださり

その道具の開発者の方とも直にお会いでき、商品開発のお話まで色々とさせていただいた。

ある一つの道具に、今も僕はずっと助けられている。

道具一つのおかげで、多くの笑いと感動を生ませてもらえた。

「いえいえ、その道具をこうして使っていただけたことが嬉しいです。」

開発者の方の言葉が思い出させる。

巡り合わせてくれた 芸の神様に 感謝したい。

これからもずっと 道具はどこかで生き続け

驚きの声がどこかで響かされる。いろんな場所で。

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