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道草物語 第三話

Image by Olia Gozha

妻が見つけてきてくれた物件は、駅近くにあるおしゃれなマンションの一階だった。ウッドデッキが特徴的で、30坪くらい。たぶんパンパンに詰めて15席確保できる広さだ。

縦長の奥行きのあるその物件は、いわゆる「スケルトン」という状態で、本当に何もない。ガスも水道も通ってないし、トイレもない。まっさらなキャンバスを見せられた僕は、不覚にもワクワクドキドキしてしまった。ここにあれを置きたい。ここにあの家具を置きたい。この向きでキッチンを作って、ここにトイレがあるといい。もう夢物語の著者のように、どんどん綴っていく。お金?そんなの大丈夫。何とかなる。なにせ「今を生きてる」のだ。

不動屋さんもオーナーさんもとてもいい人だった。妻も僕も「やる」と決めた。内見に行った30分後の話だ。ここだ、ここしかない。そして今だ。今しかない。この後びっくりする見積額が来るとは思ってもいなかった。夢から現実に引き戻される瞬間であった。

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Image by Jukka Aalho

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