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本当にあった、ニュースにはならないタクシーの乗り逃げの話 後編

Image by Olia Gozha

お客様(以下客)「運転手さん、
とりあえず支払いは大丈夫そうです」

財布がなくても、お家に電話をして
支払いは大丈夫と伝えてきたお客様。

一つ、目印として指定していた
警察署付近へ近づいた。

客「運転手さん、警察署を越えて
最初の信号を右でお願いします」

運転手(以下運)「かしこまりました」

客「右曲がったら、ひたすら真っ直ぐ言って
途中コンビニがあるのでそのコンビニを越えた三つ目を右です」

運「コンビニを越えた三つ目を右で、、」

客「そしたら、・・・細かいのでまた伝えます」

運「かしこまりました」

客「運転手さんって大変ですよね、
こんな細かい道さすがに覚えにくいでしょ」

運「そうですね~、
世田谷の住宅地は一方通行なんかも行き交っているので迷路ですよ」

客「そっか、あの辺は大変そうっすね~」

運「はい」

客「ちょっと、電話しますね」

運「どうぞ」

客「あ、もしもし、もう少しで着くから
カードお願いね」

運「・・・・」

客「財布はあった?、、、うん、
そっか、分かった、とりあえずもう着くから」

運「・・・・」

客「たぶん、会社か、その後の飲みに行ったお店かな」

運「・・お客様、すみませんこちらを右折でよろし」

客「そこ右折で」

コンビニ越えて三つ目を右へ曲がるタクシー

運「かしこまりました」

客「その時に一緒にいたやつらにも聞いてみるよ、あとは、」

運「・・・お客様、この先は~」

客「真っ直ぐ行ってもらって、最初の止まれを左で」

運「かしこまりました」

客「会社もなくはないけどさ、
ん、・・あ~
お店ではスマホで支払いしたから確認はしてない
カバンから出したかどうかも覚えてないんだよ」

止まれを左へ曲がるタクシー

客「だから、会社と、お店と、い」

運「お客様~、すみませんこの先は~」

客「真っ直ぐ言って、パーキングの角を右で」

運「かしこまりました」

客「いっしょにいたやつにも聞いてみて、
それでもなければ警察に頼るしかないかもな」

パーキングの角を右へ曲がるタクシー

この時点で、
周り一帯は住宅地になり、
方向感覚が失われ、
どこがどの方角かもわからない。

運「お客様、」

客「もう少しまっすぐ、
もう着くよ、カードお願いね
、はーい、お願いしまーす」

運「お客様、この先は~」

客「もう少し真っ直ぐで~、
あそこの止まれのちょっと手前で。」

運「かしこまりました」

少し走って、言われた場所て停まる。

客「あれ、出てきてない。
運転手さん、すみません、少し待ってもらっても良いですか?」

運「はい、大丈夫ですよ」

客「・・・・」

運「・・・・」

一分ほど経過、、

会話もない住宅地の静かな空間は、一分が長い

客「・・・・」

運「・・・・」

一分ほど経過

客「何してんだろ!ちょっと電話してみます」

運「はい」

客「もしもし、もう着いてるよ、
運転手さん待たせてるから、お願いね」

運「・・・・」

客「すみません」

運「いえ。」

それから、、、

一分ほど経過、

二分ほど経過、

三分ほど経過、

十分ほど経過。

客「おっせぇ!」

運「・・・・」

客「運転手さん、すみませんちょっと取ってきます」

運「あ、はい、かしこまりました」

外へ出ていくお客様は
目の前の住宅の門扉を開け入っていった。

運「・・・・」

一分経過、

運「・・・・」

二分経過

運「・・・・」

十分経過、

運「あれ。。。」

十五分経過、

運「マジか・・・。」

二十分経過

運「やられた。。。」

門扉を開けて入っていくのは見た。
しかし、玄関までは見えない。

住宅地の奥に裏口があってそこから逃げたのか。
結局30分以上待っても、そのお客は戻ってこなかった。

料金にして3,000円弱。

料金も痛いが、待たされた時間も痛い。

運転手とずっと世間話をし、
最初に自分が支払いを出来ないことを告げた後に
別の人が支払いをすると安心させる。

電話も、本当に会話をしているようにしか
聞こえなかったらしい。

お客自身も待たされる身となり、
運転手と一緒に時間を無駄にしているというのも、
怪しさを軽減させていたかもしれない。

わざわざそこまでしてタクシーに乗る輩もいる。

表には出なくても、
実際にあったタクシー乗り逃げの話。


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