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一人旅

Image by Olia Gozha

僕は短い一人旅に出た

なぜなら体がそうしたいと言ったから

理由はそれだけで十分だと思った


静かに消えてしまう代わりに

誰かの世界にほんの少しでも色を塗りたい

僕にしか言えない言葉を紡ぎたい

そんな風に思った


放った言葉は誰かと被るかもしれない

相手にとってはちょうど道端に落ちた煙草の吸い殻のように どうでもいいものかもしれない

僕が魂を吹き込み絞り出した言葉なんてそんなものだろう

でもそれでもいいと思った

そんな事は最初からわかっているから

僕は世界に何も求めてはいない

きっと始終全てが自分のためだから


自分に自信がもてないからか

気づけば無意識に誰かの真似をしてる

あるいは他人の求める姿に 自分をへんげさせていく

その呪縛から今だけは離れたい

今だけは僕は僕でいたい

子供の癖に生意気だなと思いながらも

そんな事を考えた


冬の乾いた風に体を委ね 

青く済んだ晴れ渡る空を見上げては 

どこか悲しそうに目を細める

そんなませた自分が大嫌いだ


理不尽な誰かがずっと僕をみている

君は苦しんでいる方がお似合いだよと

耳元で囁き僕から目を離しちゃくれない

そいつの監視下を離れられるような

そんな淡い期待を抱いていた


僕の伝えたいことって一体なんだろう

考えても考えても答えなんて出てこなかった

その時の気持ちを如実に語ればいい

それも間違いじゃないと思った


込めた思いが100だとすれば

受け取る思いは10かもしれない

ああおこがましいもう辞めてしまえと

考えるのを辞めたときもあった

あるいはその方が正しいのかもしれない


胸の奥がくすぐったい

胸の奥で何かがぐつぐつ煮えてる

一方そんな感覚も募っていった

それは思えば当たり前のことだ

なぜなら僕らは日々何かを考えながら生きているから

感じること、考えることは辞められないのだと思う


その度その度気持ちを紡ぐ

それだけではどこかまとまりがないような

そんな物足りなさが残ってしまう


だからいつかは何かを届けたい 

大人になったら憧れたあの人のように

彫琢された言葉の剣を

誰かにきっとかざしてみたい


今、僕は何のために生きてるんだろう

ぐるっと回ってまたこの問いに戻ってきた

死んだら悲しむ誰かがいるから

死ぬのに失敗したら想像を絶する苦しみが待っているから


僕にはこれだけで死なないのに十分な理由となった

僕は恵まれていた 

今は前よりもっと恵まれているだろう


内実は変わっていないと言えども

確実に底上げはされている

それでもやっぱり生きることから逃げたくなる

辛い気持ちは強く残ってる


死にたい人にただ死ぬのはやめなと言うのは全く響かないし無責任だ

辛いけど頑張ろうと言うのも何か違う気がする

幸せが待ってるなんて 言われたってぱっとしないことは言わない

でも少なくとも僕は今は前よりも幸せだ

生きていてよかったと思える瞬間は少なくない回数ある


幸せの敷居を低くしたのもあるが

それよりも自分がほんとうに欲しかったお金では買えないものが手に入ったから


幾度となく「自分」という壁に突きつけられるとき

僕は今でも耐え難い苦痛に襲われる

それは今でも「自分」を受け入れられてはいないから

そのピースだけはどうしてもはまってくれない


人には最も嫌われやすい気質で

自分がいくつもに分裂していて 

知らないやつがたまに顔を出して

辛い時にでもいつでも笑えて


人を遠ざけるようになってもう随分経つ

でもそれでもいいと思うんだ

だけど一番傷つくことは

信じてたものが崩れて壊れること 


僕が一番欲するものとは

変わることのない優しさと終わることのない人との繋がり

誇れる自分はその次あたりだと思う


きっとそのままを受け入れられることが

唯一の救いになるんだろう

愛を注がれた子供が徐々に徐々に親元を離れていくように

自らの安全地帯なくして危険な場所へと飛び込む勇気など育たないと僕は思う


自らを囲ったその硬い殻は

中の自分が弱いことの現れだ

走っても走っても追いつくことはない

無理に虚勢を張るのは自らに毒だ


自分をほんの少しでも愛せたとき 

そのとき初めて自分を生きていると思えるんだと

誰かが言ってた言葉に何となく共感する 


弱いままで歩けばいいような気がする  

そこから自分を追い求めていけばいい

その方が僕にはあったやり方だと

そんな風に僕は思った


でもとはいえ実行できるかどうかはわからない

案外難しいことだと気付いた

言い放っておいてなさけないことだが


一方で以前からずっとモットーとして掲げていて

大学生になっても 大人になっても 

ずっと持ち続けていこうと固く思っていることがある


それは誰かの苦しみを拾うこと

何もないように見えたり 反対に過激化して素直にそれとは受け取れないようなものでも

僕は拾いたいと思う


僕は所謂創作というものを始めた時から

初めからずっとこのモットーを言葉に置き換え発信していた

今改めて確認できた


さて電車を降りて

北鎌倉駅に降りた

この場所は思い出の土地だ


かつて最も精神が荒れていたときに 

好んで何度か訪れた場所

また彼女と初めて出会った場所だ

お土産はあとで考えよう


僕は秀でたポエットではないから

気の利いた情景また叙情描写はできないが

そこには確かな感慨深さがあった

都会のごみごみとした環境とは対になる街だ

あてもなくお決まりのコースを歩いていく


夜空に一番星が出ている

あれは何の星なんだろう

ぼーと星を見つめながら

あの星は今の僕みたいだなと思った


紺色の空に一人光を放つ星

一人途方もなく歩く僕みたいだ

あの星は 周りに星の友達がいなくて寂しくないのだろうか

僕は 今一人でも寂しくない

というか一人の方が楽でいい

たまにはこんな時間があっていい


一人で歩を進めていると

なんで生きてるのかなって

そんな問いが何度も頭をよぎる


僕は 個人的には何となく生きていていいと思っている

ぶらぶら何となく生きていたら

いつか生きていた意味がわかるときがくるかもしれない

そう思うことにしている

そうでも思わないと辛いから


でもこれは自ら作り出した言葉だから

きっとどこかでそう実感している節が少しはあるんだと思う

現に 前述にもそんなようなことを匂わせる内容があったかと思う


伝えたいことって何だろうという問いを

紐解くために初めは遠出しようと思ったが

だんだん僕の頭の中は

今僕が自分に求める処方箋って一体なんだろう

そんな問いに変わっていった


学校に行けない自分はとうに諦めている

今はオルタナティブスクールを見つけ

大学受験に挑むだけのきちんとした学力を身に着けている

これは他でも幾度綴っているが

学校は一つの手段でしかないと思う


今の僕が患っているのは

将来働けるかという悩みと

人格としての自分そのものについての悩みだ


後者についてだが 

自分のことが受け入れられないなら

自分を受け入れるか

周りに受け入れてもらっていることを確認するか

自分の求める自分に変わるしかない


鎌倉の海岸まで来た

誰もいない砂浜に一人腰を下ろすと

さっきの一番星とまた目があった


波の引いたり押し寄せたりする単調な音が

やけに鼓膜に響く

さっぱりとしていて心地よい


この波が 僕の心の中まで洗ってくれればいいのに

そんなことを感じた


身をねじりふと後ろに視界をずらすと

夜空にまん丸の満月が出ていた

今の僕の心とは対照的だなと思った


僕の心は今 ある考えで揺れていた

今の自分を続けるか

夜空に瞬くあの孤独な一番星のようになるか


自分を変えるということは

ある程度納得できるまでの自分になるということは

またいつかの僕のように

自分をあれこれ制限しなければならない


一人で息を殺して

見た目にも今以上にこだわって

人といるときは 自分を頑張って殺さないといけない

それは言い方を変えれば「繕う」「逃げる」ということにもなる


反対に理想の自分に立ち向かって

変にかっこよく見せたりおもしろいことを言おうとするよりはいいかもしれない


今の人との関係がうまくいかない自分が嫌で

いっそそこから逃げようというのも

立派な選択肢だと僕は思う


それに抑える必要のある自分というのもいるだろう

それが習慣化されれば 後で生き安くなるかもしれない


さて どうしようか



そして僕は気付いた

もともと僕には自分が嫌いで

自分についてぐるぐる考えるところはあったが

ここまで僕が自分について突き詰めて考え出したのは

僕の周りにいる僕を批判してくる人の存在が原因だと


そんなに突き詰めなくてもいい

そのままを受け入れてくれる人だって僕の周りには何人かいるんだ


いつか生きてれば自分を受け入れられる瞬間がくるかもしれない

肩の力を抜いて行こう


砂浜をたつとき

僕はそんなことを思った

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