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ガソリンスタンド経営者だった夫がガンを患って木工作家になっちゃったお話その10

Image by Olia Gozha

■ARI.ウッドスタジオ 始動!

2006年3月 

夫は訓練校を卒業し、ARI.ウッドスタジオはスタートしました。


大型の機械はほとんど中古で手に入れ、手工具も材料も、ネットやオークションを使って揃えました。技術を身につけただけで何の見通しも立っていない中で、大きく初期投資をすることはできませんでした。


かろうじて電気は通っているものの、水道もトイレすらない作業場でしたが、できる範囲で整備を重ね、作品を作れる環境になりました。


健康面、環境面、なにもかも完璧ではなかったけど、作れるだけでありがたい と思っていました。


作品ができるようになると、次に必要なのは発表の場です。販売してお金を得ることができて初めて「仕事」と呼べる。

作りたいものを作っているだけなら、趣味でいいわけです。


最初のうちは地元の人に知ってもらおうと機会があれば、バザーに出たり、銀行の一角に展示させてもらったりもしました。


地元のデパートの催事に手作りをしている人を集めた催しがあり、そこに売り込みにいったこともあります。


幸い、手探りでも行動したことで人と繋がり、新たな出会いに恵まれ、わたしたちはだんだんクリエイターの方々と知り合っていきました。


ジャンルは違えど、誰もが自分の手で作品を生み出し、そして発表の場で酸いも甘いも経験して鍛えられ、ステップアップしていくのは同じでした。


「好きなことを仕事にできていいですね」

よく言われる言葉ですが、好きなことができる分、引き受けることもまた多くあります。


クリエイターにとって、自分自身でもあり子どものようでもある作品。


それを評価するのは他人。

これはなかなか精神面に響きます。


作品の価格についても、どこを基準につければいいのかという明確な指針はなく、最初の頃は作業時間は入っていないくらい安値で販売することもありました。


今となればそれは全て自信や経験のなさからでしたが。


2009年、知り合いの陶芸家さんに紹介していただき、鹿児島空港で個展をさせてもらえたことがわたしたちの意識を変えました。

空の玄関で出会う方々は、県外の方、海外の方、そして ほぼほぼ 初めましての方。


地元の人にガソリンスタンド経営から木工作家に転身したことを知ってほしい、と思っていたわたしたちでしたが、それはとても小さな視点だったと気づかされました。


前職が何であるかなんて全く関係なく、どれだけ年数を重ねてきているかも関係なく、新しく出会う人たちは、夫を「木工作家」として見てくださり、気に入った作品を手にとっていただける。そのシンプルなことに感動しました。


夫自身もわたしも、ようやく木工家を名乗ることに自信が持てたきっかけでした。


ほんの少しずつではあるものの、夫の作品を気に入ってくださる方が増え、作業場に訪ねて来られる機会も増えました。


■ギャラリーがほしい

作業場はあっても作品を並べる場所がないことはARI.ウッドスタジオをスタートしてすぐ問題になりました。でも、作業場と同じく、いきなりの新築は難しい。わたしたちは、中古のコンテナハウスを探しました。工事現場で見かける仮設の事務所のようなアレです。

16畳ほどの広さのコンテナを購入し、設置のタイミングで水道工事を入れました。コンテナの内装も自分たちで。壁はお得意のペンキ塗り。床はフローリング材を買ってきて、夫が仕上げました。

数年間、作品の展示や打ち合わせ、そして休憩室としても使いました。トイレは仮設トイレを置いていました。

必要最低限の環境は整っていましたが、お客様が増えていくにつれてわたしたちには次なる夢ができました。

ギャラリーを建てたい!



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