top of page

13/6/25

それは神がかり的な出会いから始まった~その5

Image by Olia Gozha




ここは平泉駅前の商店街。


60年前は両脇に家などなかったそうで、

ここでも義母はどうもピンと来ないようでした。


「駅の向こうに行けるかしら?」


案内の方に聞くと、

「もちろんどうぞ」とホームに抜ける扉を開けてくれました。


   ━─━─━─━─━─



あっ!!


義母と叔母が同時に声を上げました。





駅の向こうには

60年前と同じ風景が広がっていたのです!!


線路も、線路から見える山々も。


「あの山に栗拾いに行ったのよ!百合の花も摘みに行った。

 そうそう!あの山、なんて懐かしい……」


義母は目にいっぱい涙を溜めながら

当時を思い出しているようでした。


「お父さん、お母さん、戻ってきたよ。平泉だよ」


叔母は、日本から持参した祖父母の写真をそっと取り出し、

懐かしい景色を見せてあげていました。


「あっ!あの道! ほら、あの道も同じだよ!」





2人が小学校の頃、毎日通った線路を渡る小径です。

なんと、同じ場所にそのままありました!


ただ少し変わっていたのは、新しく塀ができていたこと。


「あの塀の向こうに満鉄の官舎があったんだけど……」


そこに昔の家はもうないと分かっていても

確かめずにはいられませんでした。


今はどうなっているのか。

官舎の跡地はどう変わってしまったのか……。

  ━─━─━─━─━─





塀で囲まれたその一角は、

今でも鉄道関係者の住宅地なんだそうです。


でも、義母が住んでいた頃の面影は全くありません。


「少し歩いてみましょうか」


ガイドさんに誘われるまま、横の小径に入っていくと、

古い住宅地に突き当たりました。


「当時の様子が分かる人がいるかもしれません。

 ちょっと聞いてみましょうね」





家の中から出てきたおじさんが

何やら説明しているようです。


通訳してもらうと、

この家は45年前に建てられたもので

もう誰も住んでいないとのこと。


「そうか、これで築45年だったら

60年前の建物なんてもうないよね」


私たちがガッカリしていると

おじさんがこんなことを教えてくれました。


「ここからちょっと歩いた所に

日本人が建てた家が3軒だけ残っているよ。

でも、あと3ヶ月で取り壊される予定なんだ」


………


言葉を無くすと同時に、鳥肌が立ってきました。


なんという偶然!

この平泉に、当時の建物がまだ残っていたなんて!


しかも3ヶ月後に来ていたら、もう見られなかったなんて!


「おじさん、謝謝!」

信じられない気持ちで、私たちは先を急ぎました。


どんな家なんだろう?

義母たちが暮らしていたような家なんだろうか?



PODCAST

​あなたも物語を
話してみませんか?

Image by Jukka Aalho

高校進学を言葉がさっぱりわからない国でしてみたら思ってたよりも遥かに波乱万丈な3年間になった話【その0:プロローグ】

2009年末、当時中学3年生。受験シーズンも真っ只中に差し掛かったというとき、私は父の母国であるスペインに旅立つことを決意しました。理由は語...

paperboy&co.創業記 VOL.1: ペパボ創業からバイアウトまで

12年前、22歳の時に福岡の片田舎で、ペパボことpaperboy&co.を立ち上げた。その時は別に会社を大きくしたいとか全く考えてな...

社長が逮捕されて上場廃止になっても会社はつぶれず、意志は継続するという話(1)

※諸説、色々あると思いますが、1平社員の目から見たお話として御覧ください。(2014/8/20 宝島社より書籍化されました!ありがとうござい...

【バカヤン】もし元とび職の不良が世界の名門大学に入学したら・・・こうなった。カルフォルニア大学バークレー校、通称UCバークレーでの「ぼくのやったこと」

初めて警察に捕まったのは13歳の時だった。神奈川県川崎市の宮前警察署に連行され、やたら長い調書をとった。「朝起きたところから捕まるまでの過程...

ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

旅、前日なんでもない日常のなんでもないある日。寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。高校2年生の梅雨の季節。明日、突然いなくなる。親も先生も...

急に旦那が死ぬことになった!その時の私の心情と行動のまとめ1(発生事実・前編)

暗い話ですいません。最初に謝っておきます。暗い話です。嫌な話です。ですが死は誰にでも訪れ、それはどのタイミングでやってくるのかわかりません。...

bottom of page