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ダイアログインタビュー ~市井の人~ 井上禄也さん7

Image by Olia Gozha

インタビュー日時:2016年11月11日 12時00分~16時00分

インタビュー場所:南相馬市立図書館内 喫茶「Beans」

天気:晴天

◎協調の必要性

 

井上 ヌルい雰囲気は良い部分でもあるけど、共存するなら共存するで、もっとみんな手を取り合って、共存する方法を勉強していきませんと。街の中でいろいろな組織が細分化されて併存していて、それぞれが連携せずにやってる。その結果がシャッター街ではねぇ(苦笑)。

 

 ――協調しようという動きも無ければ、切磋琢磨するような競争もあまり感じないですね。シャッター街対策も特別なものは打ち出せて無いようですし。

 

 井上 シャッター閉じたままで何で平気なのかな、そのままで良いのかなという気はしますね。みんな意外と切羽詰ってないのかも。それに、アイスまんじゅうにしても、南相馬のソウルフード的な扱いになってる割には、街全体としてはあまりアピールはしていないですよね。南相馬を紹介している団体のWebページで取り上げられていないですし。

 

■ この辺りの話は、アイスまんじゅうに限った話では無い。井上さんもこの話をしていた時にこんな事を話していた。「南相馬の人たちは、この街には何も無いと言い過ぎる。名物だって色々あるのに」と。確かにそうかも知れない。市内でいくら名物作りを頑張ったところで、それを取り上げて貰えない、評価してもらえず、「名物が無いから新しく名物を作ろう」という号令ばかりでは、名物など出来ない。そしてそれは、個別の商店が危機感を持ってしっかり店舗を開けて営業し、各団体が連携して街全体で盛り上がっていく必要がある。そうする事で初めて、市外の人たちに「これが南相馬の名物だ」と認識してもらえるのだろう。

そうした機運は、民間だけでなく、行政とも手を取って盛り上げていく必要がある。その点で井上さんは、行政の力に期待しているのだ。街全体としての危機感が足りない、方向性が打ち出せないという問題は、誰かが主導して対応していく必要がある。その力を持つのは、やはり行政だろうという事だ。ただ、行政が指導力を発揮するためには、市民が声を上げる必要がある。市民一人一人を見ていくと色々な意見があって、中には正反対の意見もあるからだ。そうなると行政としては動きにくい。この話は「卵が先か鶏が先か」という類の話になってくるが、これは「想いと力」の間で共通の目的意識を持つことが大事だと、私は思う。官民の間での「対話」が必要だ。それにここで言う「指導力」は、事業主体者という意味では無い。主体者は行政では無く民間で、行政は方向性を示す役目を担うべきというのが井上さんの考え方だ。


◎名物の作り方

 

 井上 以前、ある方のところにうちで作った新作アイスを紹介しに行った時に、そのある方からこんな話があったんです。「今南相馬にどのくらいのお金が入ってきているか分かるか? 」と。復興関係の助成金や除染の費用なんかを含めて「二兆五千億か六千億だ」というんです。で、その方は「このお金はいずれ入って来なくなる。その時にどうするかを感がえなきゃならない、若い世代がこの地域を代表する何かを作らなきゃならないんだ」と言われたんですけど、その時僕が作った新商品の、箱も開けておらず(笑)。僕が持っていった新作アイスって、言うところの「若い世代が作ったもの」だと思うんですけどね(笑)。

 

 ――「仰る事はご尤もですが…」って感じですね(笑)。

 

 井上 そんな事もあって、行政の方向性がよく分からないんですよ(苦笑)。さっきも言った通り、六次化なんて行政が取り組むべきじゃない。六次化となると、どうしたって営利事業になるわけで、そこには明確な販売目標が必要になってくる。でも、行政としては販売目標を事業計画に入れ込む事は出来ないみたいなんですね。それでは協力する民間の事業所も本気で取り組めない。それに六次化商品の販売チャンネルって、最初のうちは地域の直売所みたいなところになるじゃないですか。そうなると競合する商品は地域の産品になってくるでしょ。それじゃ本末転倒ですよね、地域活性化のために売り出した商品が地域の産品と競合するんじゃ(苦笑)。それなら、民間が出す商品をアピールして、大手のスーパーなんかに売り込んだほうが良いんですよ。競合するなら他地域の商品で無いと駄目ですよね。でも、「売り上げ目標を行政としては上げられないんですよ」と言われまして。

 

 ――行政としては致し方ないんでしょうかね。

 

 井上 でも、売り上げ目標って大事ですよ。六次化も含めた話ですけど、行政主導で補助金を取って行う行政主導で商品開発って、それに関わる業者も損を出さないようになってるじゃないですか。でも、民間の商品開発って、絶対に損を出さないようにアイデアを絞り出して行ってる。そういう時のパワーの出方って全然違うじゃないですか。見込みより売れなければ物凄い損を出してしまう商品開発って「これなら大丈夫! 行ける! 」というところまで知恵を絞って絞って、しっかり売り上げ目標も立てて、パッケージやCMや販売方法なんかを出し尽くして作った商品と、売れなくても損を出さない商品では、どうしたってメーカーも力の入れ方が違う(苦笑)。そんな点から見ても、行政主導で名物作りなんて、しない方が良いと思うんです。

 

■ 商品としては、常に「これ良いね」と消費者が見てくれる事が大事で、売り上げという目に見えるものを目標として掲げる事が大事だ。「いかにして商品を広めるか」は「いかにして商品を売るか」でもあるからだ。そのために、どの部分にどの程度の力を注ぐべきか……これを見つける事は、日頃から商品やサービスを「商品」として販売し続けている民間の得意な領域だ。商品そのものの持つ価値や販売ルート、コマーシャルなどといったノウハウは、民間の力を活かした方が良い。

こうした「名物づくり」において行政に担ってもらいたい領域、行政が力を発揮出来るカラーはどんなものだろう。それは、地域における意見集約や、地域全体で取り組んでいるという一体感の創出ではないだろうか。そこで必要になってくるのが旗振り役である。行政は旗振り役に徹し、プランの詳細は民間が担うくらいの事をしても良いのかも知れない。

これは、「商品としての名物」だけに言える話では無い。文化や人をどう売り出していくかという事にも当てはまる。

~つづく~

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