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ダイアログインタビュー ~市井の人~ 井上禄也さん3

Image by Olia Gozha

インタビュー日時:2016年11月11日 12時00分~16時00分

インタビュー場所:南相馬市立図書館内 喫茶「Beans」

天気:晴天


◎原色でカラフルな国


井上 日本全国どこに行っても同じチェーン店があって、同じような商品が売っていて、今の日本は面白くないなと思うわけっすよ。


――面白くないというと?


井上 もっと地方ごとに特色のある、カラフルな国の方が良いなと。それが僕の持ってる「国の理想」なんですよ。そうであれば、特色を求めてお客さんも来るわけですし。「何だか面白い国だな」と(笑)。例えば京都は京都で独自のカラーを確立してるけど、他の地域もそういうものがあれば良いんじゃないかと思うんです。僕は岡本太郎が好きで、使ってる手帳なんかも岡本太郎のデザインを基にしたものなんですけど、岡本太郎の作品みたいに、原色でカラフルな色遣いの国の方が面白いなと思うんです。うちは乳業事業が得意なわけですけど、乳業の中で、社会の色の一つになっていたらいいなと。


――同様に乳業事業を手掛けてる会社はあるけど、その中でも得意を活かしていけば良いという事ですね。


井上 他の会社には他の会社の得意がありましてね。カフェオレが得意だったりヨーグルトが得意だったり。そんな中で、うちのアイスまんじゅうって売れてはいるんですけど、じり貧なんです(苦笑)。物流の手段が限られてるし、今以上に売り先を拡げるには人手不足だったり設備不足だったりするわけで。じゃあどうすると言っても、下請けをやり続けるのもなかなか大変でしてね。となると自社のオリジナル商品を作りたいなとなるんですよね。昔からそんな事を思ってたわけなんですけど。で、震災があって「もしかするとうちの会社、潰れっかも知んない」なんて状況になるんですね。そんな状況で、しっかり爪痕を残していかないと、この地域にも関わった人にも何も残せない。じゃあ何を作ろうとなった時に、カフェオレにしてもヨーグルトにしても牛乳にしても、もう既に強力なライバルがいてしのぎを削ってる。そんな中にうちが参入していっても、ボコボコにされるだけで勝ち目がないんですよ(苦笑)。そこで「うちが勝てるところは何だろうか」と考えてみると、やっぱりアイスなんですよね。大手の下請けをやり続けてきたという技術やノウハウがあるし。県内の他の乳業会社もアイスはやってるけど、アイスだったらどこにも負けないだろうと。そうなれば、県内の乳業メーカーだけを見てみても、カフェオレが得意なメーカー、ヨーグルトが得意なメーカー、低温殺菌乳が得意なメーカー、そしてアイスが得意な松永牛乳といった具合に、とてもカラフルになるんですよね。


――なるほど。あまりそんな風に気にしたことは無かったんですけど、同じ業界でも棲み分けって出来てるもんなんですね。


井上 そういう風にカラフルになればみんな喧嘩する事も無いし、みんながハッピーだという。みんなお互いに「こんな方法もあるよ」「あんな方法もあるよ」という具合に情報交換も出来るし。でもみんなそれぞれ独立して県内の乳業を担ってる……そんな形が良いなと思うんです。


■ カラフルな国、カラフルな世の中、カラフルな社会という概念が広がれば、同じ業界にいながらにして、自分のカラーを作る事は可能というわけだ。自分のカラーを作るという事は、自分のその時の状況をきちんと分析し、強みを把握してそれを突き詰め武器にする事だ。これはとてもシンプルな事だが、なかなかやりきれない事なのかも知れない。ここに、先に出ていた「あまり広げ過ぎない」という考え方が反映されている。

震災を経験し「自分の会社が潰れるかも知れない」という状況になり、様々な問題が山積する中、こうしたシンプルさに立ち返るのは、自然な事だったのではないだろうか。

~つづく~

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