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安本豊360℃ 歌に憧れたサッカー少年 Vol.31「2016年」

Image by Olia Gozha

僕は、2016年の夏、豊と出会った。


それまでの豊に何があったのかは、ギブソンが教えてくれた。


でも、あと一つ、ギブソンから聞いていないことがある。


「あっちゃん」のことだ。


豊は、あっちゃんとどうやって出会ったのだろう?


豊は、あっちゃんに、僕を「新しい家族」と紹介してくれた。


ただの興味以上に、僕は、その物語を知りたいと思った。


「ギブソン先輩、あっちゃんのことですけど…」


そこまで言ったところで、ギブソンは、わかっているよと言いたげに笑って見せた。


「ティラー、君がやってくる少し前の話だよ。」

 



豊は、2016年の春に結婚した。


あっちゃんは、「2nd LEG」のライブを見に来てくれていた豊のファンだった。


ユニットを組んだ直後から、しばしば見かけていた彼女が、自分でギターを弾きながら豊の歌を歌っているのを、スマートフォンの無料アプリ ツイキャスにアップしているのを、豊が見たのは、その年の秋だった。


自分の歌を歌ってくれる人はいなかったので、豊は、それが素直に嬉しかった。


そして、流れ出てきた歌声に、また衝撃を受けた。


プロになればいいのに…と、豊は真剣に思ったほど、その歌声には、才能を感じた。


何も活動をしていない彼女を思うにつけ、ステージに上がっていっぱしに歌っている自分が恥ずかしく思えてくる。


海岸で、18歳の豊の歌声を聞いたマサシは、おそらくその時の豊と同じように感じたのだろう、と、豊は初めて気づいた。


この人の歌を応援したい…と豊は思った。


世の中の人たちにもっと聞かせたい、という思いから、豊は、ツイキャスの映像をリツイートした。


しかしながら、あっちゃんの思いは違っていたようで、豊に「ほかの人には聞かれたくないから、リツイートはやめてください」と連絡が入った。


それがきっかけで、豊とあっちゃんの交際が始まった。


年が明けて、桜がひらひらと風に舞う頃、2人は結婚した。


結婚式は、多くの仲間が祝ってくれる中、あっちゃんが豊を初めて見たスロープで行われた。


豊とあっちゃんの交際が始まった冬、豊は、この日が来ることを予感したという。


あっちゃんは、豊にとってとても魅力的だったが、改めてどこがいいのかと聞かれると、答えられない。


それでも、やはり魅力的であることに違いないので、豊は、一生かけて、彼女のどこが魅力的なのか知りたいという気持ちを、歌にした。


「3分の2の純情」である。


豊があっちゃんに出会うまでに人生の3分の1を費やした。


残りの人生の3分の2をかけて、あっちゃんのどこに惹かれたのかを探そうと思ったのだ。

 



あっちゃんとの結婚と時を同じくして、豊は、大阪のライブハウス「トラッド」のステージに上る機会を得た。


スロープとトラッドは、いわば兄弟店の間柄だったこともあり、大阪でも演奏してみたいという豊たちの希望は、スムーズに叶えられた。


広いホール、高い天井、音響も立派にそろえられていて、さすがは大阪のライブハウス!と豊たちは、心の中で拍手を送った。


自分たちの出演順が来て、上がったステージで、2人は同じことを思った。

「ここで、ワンマンライブをしたい!」


それは、2人の目標の一つとなった。


その願いが叶うまで約1年がかかることになる。

 



そして、夏が来て、僕と豊が出会い、秋には神戸のライブハウス チキンジョージで2ndLEGのワンマンライブを開き、年末、豊は父親になった。

 

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Image by Jukka Aalho

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