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古くからの、知り合いのような。
ずっと前から、家族のような。
その人が、私を訪ねてくると言ったなら。
まだ、会ったことのないその人は。
私のことが、分かるだろうか。
私は、その人のことが分かるだろうか。
互いに、互いをみつけることができるだろうか。
たくさんの人が、行き交う。
出迎え、出迎えられ。
見送り、見送られる。
停車場。
それを、想像して。
そっと、目を閉じ。
熱くなる目の縁を、じっと感じているのは……。
昔昔、
一枚の写真を手に、列車から降りる復員兵を待って。
汽車が着くと、写真と目の前の人を見比べて。
初めて、婚約者と対面をしたという。
入院をした病室で隣のベッドにいた、老婦人を思い出したから。
そういう、恋をなさいね。
家が決めた結婚だったけれど、この一枚の写真が愛おしくてねぇ。
そう言って、その一枚の写真を左手で押さえ右手でそのおもてを撫でていた。
そうなのか。
そうなのかもしれない。
私もあの老婦人のように、動くことのない顔それだけを頼りに。
大切に想う人を、迎えるために。
停車場へゆく。
その日が、きっと来ると信じてる。
いつか、
停車場にて、お会いします。
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