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ネット婚活マジック⑥家族歴・祖母を背負いて

Image by Olia Gozha

母方の祖母は、娘を不幸にした仇のように私を忌み嫌っていた。


後年、父が会社で怪我をして職を失って都落ちのように故郷に帰ったとき。

この祖母と一緒に、住むようになった。


何をしても誉められることのない私は、一家の恥さらしとしてだと祖母の友人が訪れると話す。


友人という人たちも、私を嫌っては蔑み、嗤う。


それをされると、とても恥ずかしかったことを覚えている。


その祖母が、認知症になった。


当時は認知症と呼ばず、痴呆症と呼んでいた。


その呼び名さえ、まだ日本に浸透していない。


テレビで病気のドキュメント放送があったり、海外でのこの病気の様子が伝えられたりしていた時代のことだった。


テレビを観て、何となくそうだと思った。


家族や親族の中で、祖母はつまはじきになった。


誰も、深く関わらなかったり、関わらなかったり。


面倒なことは私に任せておけばよいと、私に仕事を辞めさせて祖母との暮らしを強制した。


それからは、隣の市で行われるこの病気の勉強会に参加をし、今でいう介護教室では専門施設の重度痴呆棟での実習を受けて。


そこで知り合った先生の、診察を受けると。


祖母は、アルツハイマーと脳血管性痴呆の混合型でかなり進んでいることが分かった。


当時は、治らない病気だった。予防も、何も、いざ発病してからの経過観察しかなく。


ボケも手伝い、祖母の私への辛らつな言動は日々に、刻々に、凄まじくなり。


ボケる前から持ち出しては脅してきた鎌を、そのまま振るい。


私の左腕に、刺さった。


その傷は、今も小さく残っている。


その日の夕方だった、

「お母やん、どこ行っちょった」

と、私に抱きつくと、

「吾てを、ひっとり置いておきなや」

と、泣いた。


祖母の母は、心臓麻痺で勤め先の紙工場で死んだ。


漉いた紙を貼って乾かす戸板に乗って、亡骸が運ばれてきた。


祖母の父は、祖母が二歳のときに赤痢で死んでいた。


母を亡くすと、兄弟のいない祖母は天涯孤独となり義理の人ばかりの中で小さく息をして大きくなった。


だからといって、孫に鎌を振るってよいわけはない。


けれど、私を「お母やん」と呼ぶ小さな祖母はやはり可愛かった。


だから、いつも負ぶっていた。


結局は、こうなる。


命の歴史に、負けてしまう。


そればかり。


祖母が亡くなると、私がボケそうな気がした。


辛らつで、非情で、残酷な祖母それは事実。


私の左の腕の傷を触り、

「お母やん、痛いかえ。吾てが治しちゃるきに、泣かんとおってよ。ひっとり、出ていかんとってよ」

と、傷口に薬を塗りながらボロボロと涙を零していた、それも事実。


「行きやせなぁね、とくと安心しちょりなさいや」

そう言って笑顔を返しながら私の顔にも涙が流れたことも事実。


いくつもの事実が重なり合うと、優しい道を選びたくなる。


弱いと言われても、あざけ嗤われても。


生きることが下手でも、優しくいたいと思う自分がいる。

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