妹は、私が困ることや嫌がることをすると父からも母からも誉められる。
だから、
小さなときから、叩いたり、蹴ったりをしてきたけれど。
学校の教科書に落書きをしたり、破ったり、捨てることと。
私の持ち物を壊すことに、困った。
困った、と言えるほどの余裕がいつも心にあったわけではないけれど。
オムツを替えて、ミルクを飲まし、夜鳴きが始まると抱き続けたときの命と肌の温もりが忘れられず。
つい、どんなことも許してしまった。
駄目なものは駄目、いけないことはいけないと言えていたら、伝えられていたら。
姉妹関係は、もっとしっかりとして穏やかなものになっていたかもしれなかった。
だって、
私は、お姉ちゃんだもん。
そんな感じで、私は妹が好きだった。
だから、
私は、お姉ちゃんだし。
そんな感じで、私は妹を、妹が自分自身を嫌って怖がる場面をも許してしまったのかもしれなかった。
小鳥が籠の中で、バタバタと羽を動かす音がした。
近づくと、籠の中で動かなくなっていた。
籠の中には木の棒が入っていて、木の棒を妹が持っていた。
籠から棒を抜いて、小鳥を取り出すと手のひらの中で生き絶えた。
妹は、小さいなりに自分が小鳥の命を奪ったことを分かっているようだった。
母に叱られまいと、大声で泣いて。
私が、小鳥を棒で叩き殺したと言った。
母は、ほんとうのことを知りながら妹を叱らず。
私に、小鳥を土に埋めてくるよう言いつけた。
妹をこんな子にしたのは、
「あんたのせいだ」
と、いかりながら。
あの日、
手のひらに死んだ小鳥を乗せて歩いた小さな森は今もあるのだろうか。
木々は、覚えているだろうか。
小鳥が、手のひらの中で温かかったことが。
悲しくて、つらくて、寂しくて。
もしかすると、生き返るんじゃないかと思って。
それがただ一つの希望のように、私を死なせないでいたことを。
小鳥が冷たくなってゆくたびに、その希望をあきらめていったことを。
小鳥が硬くなって、私の心も硬くなり。
家に帰れずにいたことを。
言葉を失くして、声が出なくなってしまったことを。
空を観ると、星がいっぱいあったことや。
星に手を伸ばしたかったけれど、震えてできなかったことも。
何もかも、全部、全部。
森の木や草や花の香りが、包んでくれた気がした。
その気持ちにもたれるように、泣いたことも。
覚えてくれているだろうか。


