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ネット婚活マジック③家族歴・父が私に向けた包丁

Image by Olia Gozha

幼稚園の入園を控えた4歳、母に制服を着せられる私をぎらついた目で父が見ていた。


ひととおりの着せ替えを終えると母は、買い物に出かけた。


すると、台所から一本の包丁を持ってきた父が。


刃先をチラつかせながら、近づいてきて言った。


「おまえは、幼稚園になんて行っていいのかなぁー」


目の前で、包丁が揺れたと思ったら私の額から血が流れた。


父は、幼い私が羨ましいと常々に言っていた。


それを言い始めると、殴る蹴るの暴力が始まる。


痣や小さな切り傷は、いつも体にあり。


外の物置小屋に押し込められ、閉じ込められ。


夏は茹だり、冬は凍えた。


刃物で切られたのは、この4歳の春が初めてだった。


痛みを与えるには充分で、誰かが見咎めるほどには大きくはない傷を私の体に作ってゆくのは父の得意技だった。


しかし、この日の父は本当に私に死んでほしそうだった。


幼稚園など、自分は行ったことがない。


そんな上等な制服も、着たことがない。


鞄も、靴も、帽子も、持ったことがない。


だから、捨てろと言う。


捨てられないのなら、


「ほれ、これで死ね」

と、私の足元に一本の包丁を放った。


「死ねよ、死ね、死ね」

と、連呼して。


業を煮やした父は、発狂するように私の額を包丁で切りつけた。


今でも、春の日差しの向こうにあった父が目を剥き怒った顔とそのときの声と向けられた包丁の光とぎらつきを覚えている。


そうして、その日を境に。


私が父を父と認識をせず、日曜日に家にいるどこかのおじさんと覚えてゆこうとしてそれをのち数十年を完遂し続けたことも覚えている。


忘れようとして、忘れられないなら。

父親から愛されたことのない、自分を認めればいい。

きっと、それだけのこと。

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