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アホの力 5-4.アホ、街に帰る

Image by Olia Gozha

7ヶ月ぶりに家に帰る。


本格的な帰宅では無い。あくまで一時帰宅だ。まだまだ一人で暮らしていける状態では無かったし、一人暮らしをする自信も無かった。


でも……帰りたくて帰りたくて、毎日帰る事ばかりを思い描いていた私だ。しかも、じゃぶじゃぶ池オープニングイベントという、仲間の活動の大事な節目に参加する事が出来る。

ますはそれだけで十分だった。本格的な帰宅は、今回の一時帰宅を経てから、改めて考えれば良い。


 


ワクワクし過ぎて、バスの出発時間の2時間以上前に、高速バスターミナルのある東京駅に着いてしまった私。


さて、出発までどうしよう……。

八重洲地下街にあるにある『上島珈琲店』でコーヒーを飲みながらゆっくり時間をつぶす。

福島行のバスのターミナルは、東京駅八重洲口から杖を手に歩いて5分ほどのところにある。そして、その道の途中に福島県のアンテナショップ『福島県八重洲交流館』があった(現在は閉店)。私が着いた時間は開店時間前だったので、玄関から店内を覗いただけだったが、それでも福島の息吹を感じる事が出来て、それだけで思わずニンマリしてしまうのだった。

ニヤニヤしながら八重洲の街を歩く私……傍から見たら不審者以外の何者でもなかっただろう。


 


高速バスに乗り込み、いざ福島へ。

4時間弱の車中も、ずっとニンマリしっぱなし。


そうして到着した福島駅。


ついに福島に戻ってきたのだった。私の家は南相馬市にあるので、福島駅のある福島市からは結構距離がある。ここから南相馬市へは、自家用車かバスで1時間半の道行きなので、まだそこそこ距離がある。


前述の通り、この日は福島市に一泊するので、家に帰るのは翌日だ。

福島の夏の夕方を散策する。この日は少し涼しいくらいの陽気だった。


杖をついてるとはいえ、生きて再び福島の地に立てた喜びで溢れている私なのだった。


この日は福島で男だけの演劇を主宰する劇団『ロメオ・パラディッソ』の拠点となっている、通称『ロメオ城』と呼ばれている場所に迎えてもらった。ここには知り合いが大勢いて、みんな私の福島入りを喜んでくれた。


7月20日、早朝6次過ぎに、南相馬行の始発バスが福島市を出る。

この時の私の気持ちは……


『さぁ、これはビックリ箱だよ。開けるとビックリするよ。』


と言われて手渡された箱を、開ける直前のようなドキドキワクワクな気分だった。

この南相馬に帰宅する様子は、何と福島中央テレビの取材陣を伴ってのものだった。福島中央テレビは、私の入院から帰宅までをドキュメンタリーで追いかけて取材してくれたのだ。バスの中で受けたインタビューでは、そんなドキドキワクワクな心境を話させてもらった。


車窓から見える夏の朝の福島の景色は、7ケ月前と変わらないような変わったような……でも、見える景色全てを、嬉しい気持ちで見送りながらの道行きだった。


 


じゃぶじゃぶ池のオープニングうイベントは、10時開始予定。

朝からメンバーが、じゃぶじゃぶ池を設置した『高見公園』に集まって、イベントの準備をしていた。


バスが南相馬に到着したのは、8時半を少し回ったころ。バス停のある原ノ町駅から高見公園までは、車で5分かからないほどの距離だが、その時は仲間が車で迎えに来てくれていた。


その迎えの車に乗り込み、程なくして仲間のいる公園に到着。


私の姿を見つけると、みんな準備の手を止めて駆け寄ってくる。


そして一瞬ワーッと盛り上がった後、みんなすぐにまた準備作業に散っていく。

後は基本的に放っとかれた。

それで良いのだ。その感じがとても心地いい。


みんないつも通りに迎えてくれたのだ。くす玉やテープカットなんか必要ない。そうやっていつも通りに迎えてくれる事で


『お前の居場所はここなんだぞ。』


と言ってくれたのだ。

私もそのやり取りをいつも通りの笑顔で受けた。でも、心の中では嬉しさのあまり号泣していた。

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