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アホの力 4-24.アホ、感極まりそうになる

Image by Olia Gozha

転院して間もなく、病院内で講演会&ワークショップを開く事になった。


こんな事が、病院内で出来るなんて。自分でも本当に驚きだ。


そして嬉しい!とにかく嬉しい!最高の機会を与えてもらえた。

毎日毎日、嬉々としてその準備に励む私なのだった。


実のところ、この頃の私は不安を抱えていた。


脳卒中の後遺症には、手足の麻痺や言語障害の他に、『高次脳機能障害』というものがある。性格を制御出来ず、物凄く怒りっぽくなったり、認知症のような症状が出たり、視野の半分を無視してしまったり…その症状は多岐に渡る。この『高次脳機能障害』、障害の種類によっては、入院生活で気づかなかったが退院してから障害に気づいたという場合もあったりする。日常生活に戻って、初めて『こりゃおかしい』と判明する事もあるという訳だ。


『もしかしたら、自分にも隠れた高次脳機能障害があるかも』


という不安があったのだ(事実、感情のコントロールがとても難しくなっていた。今でもそれは残っている)。


肉体的には発病前の状態には戻らない。だけど、人間性にまで障害が出てしまっては、南相馬に戻っての活動も叶わなくなってしまう。

そんな不安を解消するに、一番良い方法は、『試してみる』事だ。


その意味でも、この講演会&ワークショップはとても重要だった。


『自分にもやれる!』


そう思える材料が欲しかった。


 


講演会&ワークショップの前日の夜は、ワクワクが止まらなくて、なかなか寝付く事が出来なかった。

使い古された言い回しだが、その様はまるで、遠足を翌日に控えた子供のようだった。


 


7月4日、講演会&ワークショップ当日。

この日もいつも通りの時間に起き、いつも通り食事をし、いつも通りリハビリを行った。

いつも通りの昼食の後、普段入院患者が行く事の無い行動に向かう。


まずは第1部『講演会』からだ。

講堂に入ると、物凄いたくさんの聴衆がいた。何と福島中央テレビの取材陣もいる。

聴衆のほとんどは、ビシッとスーツを着ていた。院長先生や看護師長など、病院の偉い人たちも来ていた。


『こりゃやばい…ちゃんとやらなきゃ。』

とは思ったものの、その一瞬でアホからおりこうにキャラ変など出来るはずもなく、いつも通りのダルダルな感じで講演に臨む事に。

持ち時間は45分ほど…果たして…。


 


用意しておいたスライドに合わせて話し始める。南相馬の現状の説明から始め、私自身の南相馬での活動について、つまりボランティアで南相馬入りし、そのまま居ついてコミュニティカフェ『べんりDaDo』に参加し、『みんな共和国』で子供の遊び場づくりをし、『みんな未来センター』で被災地初のフューチャーセンターづくりに取り組んだ事、そして脳梗塞を経験し、病気やその回復のリハビリから学んだ事、


『脳梗塞の経験は、被災の経験と似ている。これで自分も少しは、被災地の皆さんと近づく事が出来たかも。』

という気持ちになった事などを話した。

そして最後にちょっと感極まりそうになりながら


『隠れた後遺症の不安はあったけど、皆さんの前で無事話す事が出来て嬉しいです』


と付け加えると、会場から割れんばかりの拍手が湧きあがった。

私の人生で、これほどの拍手喝采を浴びた事は無かった。これからも無いかも知れない。その事にグッとくるものを感じつつ、壇上を後にした。

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Image by Jukka Aalho

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