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アホの力 4-4.アホ、泣く

Image by Olia Gozha

入院4日目。

この日の朝も、気持ちに大きな変化は無かった。誰とも話したくなかったし、何もして欲しくなかった。

ただただ死んでしまいたかった。

前日からリハビリも始まったが、そんなものやったところでどうなるのかも分からない。正直全くやる気になれなかった。

 


そんな私だったが、ここで一つ、大事な事を思い出した。

南相馬にはみみセンがある。そのみみセンでは、仲間が集まってお雑煮フェスティバルやその他のたくらみについて話したり、新年会をしたりしているに違いなかった。私は次の日には、南相馬に帰る予定にしていた。みみセンで色々とやらなければならない事があったのだ。帰ってそれに取り組む事はどうやら出来そうにないが、そんな私の現状を南相馬の仲間に知らせなければならない。

南相馬の仲間には、facebookで『脳梗塞で倒れた。しばらく帰れない』と伝えただけだ(「アホの力 4-1.アホ、恐怖する」参照)。これでは情報が少な過ぎて、南相馬の仲間は混乱しているかも知れない。まずは現状を伝えなければ。


携帯電話は病院スタッフに取り上げられた後、おふくろに手渡され、おふくろがそのまま自宅に持ち帰っていた。


先ずはその携帯を持ってきてもらい、そして今の状況を仲間にきちんと伝えないと。やり残した仕事も山ほどある。その段取りもしなければ。


死ぬにしても、やるべき事をやり残して迷惑をかけてはいけない。


おふくろに携帯を持って来て欲しいと頼むと、おふくろは渋っていたが、終いには了承し、携帯を持ってきてくれた。

 


携帯を手にするのは、1日に倒れて以来なので3日ぶりだ。一体どんな事になっているのだろう…。


先ずはfacebookを開いてみる。


自分のタイムラインに『脳梗塞で倒れました。しばらく帰れません』とだけ書き込んでいたのだが、案の定大混乱になっているようだった。

混乱している様子が、facebookからも伝わってくる。


タイムラインの私の書き込みには、70件以上のコメントが付いている。みんな大変驚き、そして私の身を案じてくれている。

そしてその後の続報がアップされていない事で、ますますみんなを混乱させてしまっている。

その様子を見て、とにかく驚いた。

こんなにたくさんのコメントが寄せられるなんて。

続報が上がっていなかったから『あいつ死んだかも』と思わせてしまったかな。

取りあえず生き残った事と、現在の状況をきちんと知らせねば。


そう思った私は、左手一本で何とか携帯を操作し、取りあえず生きている事、右半身が麻痺している事、元通りには戻らない事、リハビリには時間がかかるので、しばらく南相馬には戻れない事などをfacebookのタイムラインにアップした。


 


するとそこにどんどんコメントが。

どれも私の身を案じ、応援するコメントばかりだ。


あれよあれよという間にコメントが付き、ここにもトータル70件以上のコメントが。

中には、倒れる前『アイツは使えねえ』と私の陰口を言っていた人もいた。その人も本気で心配してくれている事が伝わった。

 


嘘だろ?何でこんなにたくさんの人がコメントを?


直接送られてきたメッセージも、物凄い数だった。

まず、軽く混乱した。こんなにたくさんの人が、私の身を案じてくれるなんて。


自暴自棄になり『死んでしまいたい』と思っている私の身を…。


 


混乱の後は、ひたすら泣いた。

心配してくれている事への嬉しさなのか、期待に応えられない事への悔しさなのか、仲間のもとへ戻れない事への寂しさなのか、これから先の事を思う恐ろしさなのか…。


涙の理由は自分でもよく分からないが、とにかく様々な想いが入り混じった涙だった。


 


これが、2013年1月4日、つまりこの記事を書いているちょうど6年前の事である。


この日の出来事が、それからの私の心に強く影響していく事になる。

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