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アホの力 2-8.アホ、たまげる

Image by Olia Gozha

さて、怒涛のように準備を整え(ちゃんとは整わなかったが)、迎えた『みんな共和国』開催初日。

私は別の用事をこなしてから、少し遅れて会場入りした。

まぁ初日だし、来場者も少ないだろうから、のんびりしながら徐々に雰囲気に馴染んで行こうかなと思っていたのだが…。


なにぃぃぃっ!

会場に着き、中を見てびっくりした。

すんげー人数の子供達がいる!

マジか!何事だこれ!

どこからこんなに人が湧いてきたんだ?

オープニングの時点で、100人は来場してたんじゃないかな。

子供達がいっぱいだ。子供を連れてきた大人も大勢いる。

『こ、これは一体!』

びっくりし過ぎてドン引きした私がいた。

 

とはいえ、そんな事も言ってらんない。

なんせ100人はいようかという混みっぷりだ。現場をきちんと仕切らねば。

…正直、初日はどう動いたかよく覚えていない。受付に会場案内に子供達の見守りに片付けにと、とにかく動き回っていたように思う。

手伝いに来てくれた人も大勢いたんだが、その人達に何をどうしてもらうかといった仕切りは、全く出来てなかった。

正直、それどころじゃ無かった。

『自分で考えて動いてちょうだい。』

と、そんな感じ。

だって無理だもん、仕切るのなんて。

 

でも、これは嬉しかったな!

たまげたけど嬉しかった!

子供だけではなく、大人もこんな場を欲していた。この日だけでも、何人もの人に

「有難う」

と言ってもらえた。

こんなにたくさんの『有難う』を受け取った事など、生まれて初めての経験だったんじゃないかな。

 

バカな私のことだ。会場でどうしたら良いかなんて分からない。とにかく目の前に子供がいて、遊びたそうにしている。

だったら一緒に遊ぶしかない。

会場づくりも掃除も、全部遊びにした。初日から子供達と一緒にやった。
イベントとしてどうだったかとか、仕切りがどうだったかとか、改善する点がどうかとか・・・確かにそういう振り返りは大事だけど、何より大事なのは…

“参加した人が充実してたかどうか”
だ。
その場にいた子供達も、子供を連れてきた大人達も、場をつくった我々も、初日から物凄く充実していた。

初日終了後、『あの時の仕切りが悪かった!』『あんた達は何も考えてない!』と色々な人から怒られたが、それはそれ。

初めてやる事だし、怒られるのは当然だ。仕方がない。
 

改善はするが、落ち込まない。

これもバカの特性だ。
怒られたら『ごめんなさい』して改善するだけ。
とにかくやる。

子供達がメインで遊んだ『ネバーランド』には、スーパーから提供してもらった3tものダンボールの山があり、そのダンボールを使って子供達が好きなように遊んだ。入り口にはでかでかと

“自分の責任で自由に遊ぶ”
という文字が掲げられていた。つまり『怪我と弁当は自分持ち』という訳。
なので、子供の遊びに大人は介入しなかった。
危ないなと思う事もとにかくやらせてみる。ケンカは『仲裁してくれ』と言われるまで仲裁しない。
ただ、この頃の南相馬の子どもは、外遊びを制限されていた事もあり、強いストレスを抱えていた。なので、遊び方が分からなかったり、人とどう関わったら良いのか分からなかったり、手加減の仕方が分からなかったりと言った事はあったそれに伴う問題行動も見受けられた。そんな中にあって我々は、幼児教育の専門家ではないし、メンタルヘルスに明るい訳でも無い。そうした分野に明るい人もいたが、我々が出来るのは

“とにかく本気で相手をする”

事だった。遊ぶのも本気、笑わすのも本気、怒るのも本気、子供との言い合いも本気だった。
そんな本気の付き合いを続けているうちに、子供達も徐々に問題行動を起こさなくなり、遊びにも子供の世界なりのルールが出来ていった。

 

男の子は駆けずり回って遊ぶ。
女の子は我々の手伝いをしながら遊ぶ。
高校生は、みんな共和国内で通用する通貨『ドヤ』を発行する。
大人はそんな場を見守る。
そんな場がどんどん出来ていき、現場の雰囲気はどんどん良くなっていった。

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