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今でも私の支え。犬のピピの物語(3) すとんと眠りの国の子犬

Image by Olia Gozha

(次話をアップしたらこの話と繋がっておらず、削除して再掲しました。せっかくいただいていた「読んで良かった」も一緒に消えてしまいました。たいへん申しわけありません(TT)    Akiko HS)​

 帰りみちは、たいへんでした。
 まず、道がわかりません。店には、車をてきとうに運転して着いたから、帰りみちも、ぐうぜんです。太陽と影で、方向だけきめて走ります。
 その車の助手席の、ダンボールの箱の中で、ピピはがさごそあばれました。あぶないので、箱を床において、小さな怪獣だけ、席にすわらせます。

 すると、ピピはわたしの方に向いて、ちょこんとすわりました。そして、見あげています。

じいっ・・・・・

 と、見つめているのです。

「なあに? なにか、用があるの?」
 おもわず、わたしはたずねました。 
 ピピは、ほんとうに、だいじな、しんけんな話がある、という顔で、長いあいだ、わたしのよこがおを、まじめに見つづけていたのです。

 そのあと、ピピは車の床におろされて、おおよろこびで探検をはじめました。ごそごそ、ごそごそ、ごそごそ、・・・・・。はいまわるようすは、まるで・・そう、ミミズ。みたいですよ。
 つぎには、わたしのくつと格闘(かくとう)しました。でも、わたしのくつは、アクセルやブレーキをふまなければならないので、とってもいそがしいのです。それでわたしは、

「ピピなんか、ぜーんぜんいない。いないのだ!」

 と、自分にいいきかせながら、運転をしました。それから、わたしはずっと、こんな運転方法になったのです。
 遊びつかれると、ピピは、サイドブレーキの奥にあるちいさな敷物の部分で、まるくなりました。ほんのきれっぱしみたいなところでも、ピピには、じゅうぶんな「しきぶとん」なのでした。


 ピピ用品を買うために、わたしは、とある店の駐車場に、車をとめました。助手席を見ると、ピピは、ちゃんとこっちをむいているけれど、目は、ちいさなちいさなふたつの星になっています。その星は、とおい、とおいところにあって、
(ぽつ、ぽつ・・・)
 と、またたきました。
 それで、わたしは、かわいた白いタオルをふたつおりにして、

ふわっ・・・

 と、ピピの上にかざしました。すると、ピピは、ちょうど同時に

すとん!

 とつぶれ、タオルの下で眠りの国へと消えたのです。そう、それはまるで、手品のようにね!


たうっ!!

 目ざめたピピは、ちいさな手足をいっぱいにのばして飛びついてきました。

たうっ!!(「くれっ!!」・・これは、ピピのこころの声。)


 わたしは、さらっとふりはらい、自分だけ食べものをほおばりつづけます。

たうっ! たうっ! たうっ!!(「くれっ! くれっ! くれっ!!」) 

ピピは、なんども、なんども飛びかかってきます・・・

わたしは、心の中でさけびました・・・
(す、すごい、熱意と根性ーー!!!)


 ごしんぱいなく。ピピは、それからすぐに犬用のかんづめのビーフを、それも、大きなのをふたきれも、ちゃんとおなかにしまいこんだのです。

 さて、わたしたちの車から、海が見えてきました。小さな湾に、白い橋がつながりかけています。それは、両岸から手をのばして、もうすこしであくしゅできるところです。その橋が見える、広い埋め立て地に、わたしたちははいっていきました。

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