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【裏切りの始まり】vol5

Image by Olia Gozha

和太鼓の練習のあとは、決まってメンバーとお疲れ会と称して行きつけの居酒屋に行くのが恒例だった。

いつものよーにみんなで呑んでいると、わたしはちょっと酔ってしまい、そのまま畳に横になった。

目を瞑ってはいたが意識は起きていたので、みんなの話しがぼんやりと耳に入ってくる。

旅の話しを聞かせて、と仲間のA美がハレ男と喋る。はじめは旅のエピソードを話していたが、酔った勢いなのか、ハレ男は衝撃を口にする。

「実は、北海道に居たとき知り合った女がいてさ、彼女が妊娠したんだよね、オレの子だと思う。

オレ、彼女と結婚するわ」



え、、、、????


な、、、、、、


に、、、、、、言っ、、、?


何にも聞こえない。耳がキーーーンとなって聞こえない。もはや耳の機能は無い。

気が動転しガバっと飛び起き無言のまま店を飛び出していた。車に乗り込みひたすら走った。

お酒は完全に抜けてしまい夜の暗い道路をひたすらアクセルを踏んで気づいたら夜の海に来ていた。

呆然と夜の海を見ていたが

ポロッ

ポロッ

ポロポロポロポロポロ、、、、


溢れ出した涙はやすやすとは止まらず車内は嗚咽だけ響いていた。

今度こそホントに終わってしまったどれほどの時間が経っていたか覚えていない。わたしは止まらない涙を拭いもせずに暗い海をただただ見つめていた。

そのあとの生活がどうだったか今となっても全然思い出せない。

わたしの中は空っぽで  何も無くなった。

だがこんな状況でもこんな精神状態でも

仕事に行かないと迷惑をかけてはダメだと職場に向かう日々。


泣きわめくことも、愚痴を言うことも、

サボったり、誰かに当たったり、そんなことも出来ない自分。真面目過ぎて融通の効かない性格に時々嫌気が刺す。


ハレ男はわたしだけじゃなく

他の人とも繋がっていた。



なのにわたしに「よりを戻したい」と言った。わたしが躊躇うとあっさりと寝返った。


何よりも辛かったのはわたしには出来ずにいた「赤ちゃん」がたった数回会っただけの相手にはいとも簡単に授かったのだ。


7年もの間、避妊することはなかった。

出来たら結婚しよう、二人の間に暗黙のルールがあった。


この7年間は何だったんだろう。

本当に終わってしまった。

これは現実なのだろうか。


あの時、、、よりを戻そうと言われたとき、、

素直にYESと言えば良かった、、、そうしたらきっと彼と結婚して、幸せになれたに違いない。


そんなことばかりの思考でいっぱいにしては、過ぎてしまったどうすることも出来ない過去を悔やむ毎日だった。


よりを戻そう


わたしからそう言えば

ハレ男はきっと、わたしを選ぶだろう。


そんなことも頭をかすめたが、それはイコール彼女に妊娠を諦めさせる、あるいはシングルマザーの道を歩かせることになるかもしれない。


そんなことは出来ない。ダメだ。言えない。


いやホントはもう分かっていたんだ。



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